シンプル経営貫く小集団、日本高純度化学の真骨頂
ただ「売り上げは100億円あっても貴金属を除いた薬品の売り上げは40億円ほど」(渡辺会長)であり、渡辺会長の言う粗利益率とは、貴金属原料を除いた薬品事業のみの粗利益率である。
日本高純度化学は、貴金属メッキ用薬品を貴金属込みで販売する取引と、薬品のみを販売する取引を行っている。貴金属込みの取引だと、売上債権が膨らむうえ、債権回収リスクも増大する。特に中国向け輸出はそういう傾向があり、こうした取引は極力回避する方針だという。
貴金属込みの取引の場合、貴金属価格の変動は自動的に取引価格の反映されるので、営業利益には中立である。薬品の粗利益率を指標にする経営管理には合理性がある。
さらに、原料は現金で仕入れ、販売は受取手形が多い。売り上げが増えると運転資金も増えるが、仕入れを手形に換えてサイトを合わせることもしない。「手形を管理する人数と手間が増える」からである。
このように独自の視点を貫き高収益を上げる日本高純度化学の生命線は、研究開発にある。従業員48人のうち、研究開発の人員が3分の2を占める。新卒採用も理系に限定。試行錯誤しながら新しい薬品を見つける仕事だけに、「個人の向き、不向きがある」(清水社長)のが実情である。研究開発より他部門が適職と判断された社員は営業などに配属している。
成長への追求も抜かりない。納入先の節約志向が強まり、手をこまぬいていれば既存薬品の粗利益率は低下する。そこで既存試薬から幅を広げて、自社開発試薬を原料にした高付加価値の新製品比率を高め、粗利益率を維持する方針を掲げる。すでに金節約メッキ用薬品やスマートフォン用の超微細加工に対応した新製品を拡大、エレクトロニクス産業の進化に対応している。
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(内田通夫 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2011年3月12日号)
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