経営者の「上から目線」をなくす非カリスマ意識 組織の上に行くほど「人」が見えなくなる

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会社設立から数年間は、人事責任者と毎日話していた。組織の健康は、組織体系や制度だけでは不十分。その根底にある「考え」と価値観である「魂」を日常的に吹き込むことが大切だ。社長が吹き込む役目を果たすのは当然だが、もうひとり吹き込める存在がいたほうが、組織に浸透しやすいのは間違いない。

社長なのに、オフィスをぐるぐる回遊するワケ

もっとも、人事担当者の情報ばかりに頼っていては、組織のことはわからない。そこで、努めておこなっていたのは、オフィス内をぐるぐる回遊することだ。

社内にいるときは、社長室に籠ることはほとんどなく、それぞれの部署をふらふらと歩き回っては、社員と会話を交わしていた。一人ひとりと細かく話すのは難しいが、できるだけ多くの人と話すように心がけた。

一人ひとりを観察し、会話を交わしていれば、目立たないけれども頑張っている人がなんとなく見えてくる。そうした人をきちんと見出していけば、社員も「社長は地味な仕事でも見てくれている」「自己PRがうまい人だけにだまされていない」と感じるだろう。仕事に対するモチベーションも上がってくるはずだ。

一人ひとりを知るための方法は他にもあるかもしれないが、自らぐるぐる回ることは、社員に対して「ちゃんと関心を向けている」という明確なメッセージになる。社員たちは、驚くほど社長や上司を見ていて、一挙手一投足を細かく観察しているものだ。行動は必ず社員に伝わる、と私は考えている。

目立たないけれども頑張っている人にスポットライトを当てることは、他にも意識的におこなっていた。その代表的なことが、「番組宣伝映像の品評会」だ。

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