経営者の「上から目線」をなくす非カリスマ意識 組織の上に行くほど「人」が見えなくなる

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アニマックスとAXNのようなチャンネル運営組織において、常に皆の注目を集めるのは、編成とマーケティングだ。一方、社内で存在感が薄かったのがオンエア・クリエイティブ部だった。

地上波テレビでは、番組の合間にスポンサーの広告や、その局が推す番組を宣伝する番組コマーシャルのような映像が流れる。それに対し、広告がほとんどなかった当時のCS放送チャンネルは、番組以外の時間に、チャンネルのブランド・イメージを誇示する短編映像とお勧め番組の番組宣伝映像を流していた。

私は就寝前と朝起きたらすぐ自社のチャンネルと同ジャンルのチャンネルを1分ずつ見ることを習慣づけていた。そこで気づいたことがあった。人にたとえれば、番組はその人の人格と言動を映し出す一方、その間を埋める映像はその人の身だしなみではないかと感じたのだ。

日の当たらない部署にスポットを当てる

チャンネルのブランドは間を埋める映像のイメージによって左右される。それを一生懸命考えていたクリエイティブ部に、もっと社内の注目を当てるべきだと思ったのである。

彼らは他部門と違い、夕方から夜中過ぎに仕事をしていた。そのため、他部門との交流も限られ、誰がどの番組宣伝映像をどういう発想で作ったのかは知られていなかった。

そこで思いついたアイデアは、3~4カ月に一度、番組宣伝映像の品評会をおこなうことだ。クリエイティブ部の担当者が、一つひとつの番組宣伝映像について、誰がどんな意図で、どういうアイデアから生まれた作品なのかを解説する。金曜日の夕方から大会議室でソフトドリンク、ワイン、チーズとクラッカーなどを楽しみながら、鑑賞するのである。

興味があるスタッフ全員に自由参加を呼びかけると、正社員も派遣社員も関係なく集まってきた。担当者による作品の紹介と説明が終わると拍手が自然と沸き起こった。手前味噌だが良い取り組みだったと自負している。

自由参加で気楽な雰囲気で集まり、各人が頑張っている仕事をほめる。そんな機会をつくることも経営者の重要な役割だろう。

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