経営者の「上から目線」をなくす非カリスマ意識 組織の上に行くほど「人」が見えなくなる

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こちらの役職が上になるほど見えなくなるのは、目立たないタイプの人たちだ。だから、自己PRが上手な人が重用されがちなのだが、当然、現場からは「社長は何もわかっていない」と不信感を抱かれることになる。これでは現場の士気が上がるわけがない。とくに、陰ながら頑張っている人たちはモチベーションを大きく下げてしまう。そこで私が頼りにしたのが、人事責任者だ。

人事責任者たちは、社員の採用すべてに直接関与していたことから、現場スタッフと雑談することを心がけていた。そうしていたこともあって、彼が残業しているときに悩みや不安を抱えた社員がよく相談に来ていた。現場のリアルな情報をほとんど持っていると言っても過言ではない。

人事責任者と現場の間で信頼関係

そんな担当者と毎日話すことで、どこで摩擦が起きているのか、誰がパワハラを受けているのか、誰が評価されていないのかを把握できた。さらには、改善への糸口を整理して、私ができること、すべきことについて率直な意見を述べてくれた。そのおかげで、的確な改善策を講じることができた。

そうするうちに、現場では、「人事責任者に話したことは、社長(私)も関心を寄せている」という認識がある程度広まり、人事責任者と現場との信頼関係ができあがっていった。

さらに、毎日話すことで、人事責任者は私が何を考え、悩んでいるか、関心を寄せていることを熟知してくれていた。その意を汲んで、まるで「ブランド・マネジャー」のように、現場で私の代弁者となってくれた。社長の私と現場の社員とのパイプを、人事責任者がつないでくれていたわけだ。

その結果、組織の風通しがだんだん良くなり、チームの士気も高まっていった。その立役者が、人事責任者をはじめとした人事部の力であることは間違いない。いま振り返っても、歴代の人事担当者に感謝しても感謝しきれない。

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