経営者の「上から目線」をなくす非カリスマ意識 組織の上に行くほど「人」が見えなくなる
社員のやる気を高めるためには、頑張りを正当に評価する人事考課制度が不可欠だ。
当時の日本企業には、まだ年功序列・終身雇用を前提とした人事考課制度が色濃く残っていたが、私から見ると、本質的に意味のないルールと、それを盾にきちんとした部下のマネジメントをしない無用な制度に映った。これでは、優秀な人材の意欲を削ぎ、活躍の機会と処遇を奪ってしまう。
そこで、アニマックスとAXNは、アメリカのソニー・ピクチャーズ本社に近いものを採用していた。性別、年齢、国籍に関係なく、優秀な人には責任のあるポジションを与える。
人事評価に関しては、年功の部分を減らし、その人の仕事内容によって、定量的な目標と定性的な目標のバランスを変えて、納得がいく形に落とし込んだ。
派遣社員にも特別ボーナス
賃金水準も年功序列でなく、その業界のマーケットレートに合わせた形で設定する。ボーナスは定性的な目標も含めて、具体的な目標の達成度にリンクさせた。派遣社員にもボーナス時にはできる範囲で特別賞与を出した。
昇格はその人の能力と結果を見て、適宜おこなっていた。それに伴って昇給もそのポジションの業界水準に合わせた。人事考課面談をするときには、将来何をしたいのか、今の仕事に満足しているかどうかを聞き、他の組織への異動を希望しているようなら、速やかに検討した。
ちなみに、2001年に、ソニー・ピクチャーズテレビジョン・ジャパン(SPTVJ)がソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)と合併したことで、人事制度はゼロから作り直す必要が生まれた。SPTVJとSPEとでは会社の文化がまったく異なり、人事制度に関しても、合併前のSPEは従来型の日本的な人事制度を採用していた。
新たな制度をつくるにあたり、新会社の社長は引き続き日本的な人事制度を推していたが、副社長になった私は、合理的な意味のない年功序列制度に異論を投じた。粘り強く説得したことで、最終的には、私がイメージしていたものに近い新しい人事制度の導入が決まった。
このように人事考課制度は非常に緻密な制度ができあがったが、私はそれだけでは足りないと考えていた。
そこで、事業責任者やマネジャーなど直属の部下に対して、その下の部下たちのことをよく質問していた。具体的には「部下の部下が何を考えているのか」「その人はどんな可能性を持っているのか」「どんな仕事につきたいと希望しているのか」といったことである。
なぜ質問していたのかといえば、マネジャーが部下のことを詳しく把握していなければ、どんなに立派な人事考課制度でも機能しないからだ。
人事考課制度を機能させるためには、その制度がどれだけ大切なものなのかを、トップ自らがマネジャーたちにリマインドしていくことが欠かせない。何かを導入したからといって満足せずに、「仏造って魂入れず」にならないよう目を配ることが、マネジメントでは非常に重要だ。
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