ロシアへの「経済制裁」効いているのかいないのか 戦争が長期化するかどうかは経済状況次第

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こうした制裁回避行動よりもっと大きな問題は、ドイツを中心とする欧州諸国の多くが、依然としてロシアからの石油・ガス輸入を続け、その代金をSWIFTから除外されていないロシアの銀行を通じて支払い続けているという事実にほかならない。

欧州委員会は、ロシア最大手ズベルバンクのSWIFT排除に加えて、2022年内のロシア産原油の全面輸入停止をも盛り込んだ追加制裁案を公表した。とはいえ、EUによるエネルギーの全面禁輸は一朝一夕には実現しないであろう。

例えば、EUのLNG基地能力には限界があり、パイプライン経由で輸入しているロシア産天然ガスの全量をLNGで代替する場合、輸入量の約30%分に相当する年4000万トンの基地能力が不足している。

プーチンの戦争を一日でも早く止めたい民主主義陣営にとって、この問題はまさにジレンマである。G7エルマウサミットは、ロシア産原油の輸出価格に上限を課す措置を採用した。入念な制度設計が必要であるが、その効果に期待したい。

中国やインドはロシア産原油輸入を拡大している

中国やインドが、ロシア産原油の輸入を増やしている点にも注意が必要である。ロシアは、国際価格より大幅にディスカウントした価格で、これら2カ国や第3世界に原油を提供しており、これらの国々が飛びついた形になっている。

中国の5月の原油輸入量は、ロシア産がサウジアラビア産を抜いて2021年12月以来5か月ぶりに首位になった。ロシア産は841万トン、サウジアラビア産は781万トンであったという。金額ベースでは、前者の58億ドルに対して、後者は63億ドルであるから、ロシアはかなり安価に中国へ原油を輸出している。

これらの国々にとって、割安なロシア産原油を調達する経済的メリットは大きく、この流れを食い止めるには、民主主義陣営による相当の外交的努力が必要であろう。

以上のとおり、EUやG7による対ロ制裁措置の効果を相殺する動きはどうしても避けられない。しかし、それを加味しても、少なくとも短期的には、ロシア経済が一連の制裁によって強く圧迫されることは間違いないと思われる。

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