「プーチンの本性」を見破れなかった西側の誤算 歴史家が恐れる世界が「大惨事」へと至る筋書き

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プーチンは取引を行うことができる相手だという認識は、妄想でしかなかった(写真:Kim Kyung-Hoon/2019 Bloomberg Finance LP)
2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵攻。長期化する戦争はどこへ向かうのだろうか? 「いま、もっともすぐれた知性」と目される歴史家のニーアル・ファーガソン氏は、この戦争をどう分析するのか? 今回、5月に邦訳が刊行された新著『大惨事(カタストロフィ)の人類史』に収録された「日本語版刊行に寄せて」(2022年3月執筆)より、一部抜粋・編集の上、前半と後半の2回に分けてお届けする。

歴史を予測することの難しさ

歴史を予測するのは、なんとも難しい。未来を占うことを可能にする、すっきりした歴史の「周期」などない。それは、ほとんどの惨事が思いがけない所から突然やって来るからだ。

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ハリケーンや自動車事故なら、少なくとも発生確率を付与できるが、それとは違い、最大級の惨事(パンデミックと戦争)は、冪乗則に従う分布かランダムな分布を示す。

そうした惨事は、不確実性の領域、あるいは、ナシーム・ニコラス・タレブが著書『ブラック・スワン』で「エクストリミスタン(果ての国)」と呼ぶ領域に属している。津波のようなものであって、潮流ではない。

しかも、惨事は予測可能な順序では起こらない。私に言えるのは、同じ惨事は二度続けて起こらない傾向にあるということぐらいのものだ。

今回は、疫病(新型コロナのパンデミック)に続いて戦争(ロシアのウクライナ侵攻)が起こった。1918年には、戦争(第1次世界大戦)が起きているところに疫病(スペイン風邪)が続いた。百年戦争は、黒死病がイングランドを襲う8年前に始まっている。

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