「プーチンの本性」を見破れなかった西側の誤算 歴史家が恐れる世界が「大惨事」へと至る筋書き
NATOの加盟国が携行式地対空ミサイルのスティンガーや携行式対戦車ミサイルのジャベリンをポーランドから提供しようと必死に努力しているものの、ウクライナの人々は巡航ミサイルや高高度爆撃機から自らを守るような高性能の防衛兵器を欠いている。
たしかに彼らは、侵略者たちに驚くほど甚大な人的損害を与えている――侵攻開始から3週間のロシア軍死傷者数は、アメリカ軍がイラク占領の全期間を通じて出した死傷者数に匹敵する。
たしかにプーチンが麾下の将軍たちに設定した当初の目標、すなわちキーウ(キエフ)を陥落させ、ウクライナ政府を転覆することは、今や達成不能なのが明らかだ。
だがこの野蛮な戦争を継続するプーチンの意欲を誰一人として過小評価するべきではない。
ウクライナの南部と東部のかなりの範囲を掌握し、ロシアの一般大衆には勝利のように見せかけることが、ひょっとしたら可能な程度の譲歩を要求できるまで、彼には矛を収める気がないだろう。
経済制裁の有効性
ロシアに科された経済制裁が、その厳しさでは前例がないかのように世間では言われており、この措置を立策したアメリカ人の1人によると、地震の放出エネルギー指標であるマグニチュードを制裁に当てはめれば、最大を10として、8に当たるそうだ。私は同意できない。
ロシア最大の銀行は、完全な制裁は受けていない。そして、これが肝心なのだが、西側諸国はロシアの化石燃料の購入を停止していない。化石燃料の販売で、ロシアには毎日およそ10億ドルが転がり込む。
また、プーチンは今にも失脚するとのことだが、西側諸国は経済制裁によって北朝鮮やキューバ、イラン、ベネズエラで政権交代が起こるのを何年待ち続けてきたことだろう。
ロシアのエリート層がプーチンの戦争に幻滅し、側近たちがクーデターを起こして現に彼を倒すことはありうる。
だが、プーチンが自らの軍事的失敗や経済的な圧力、アメリカの正副大統領が彼のことをためらいなく戦争犯罪人呼ばわりするという(私に言わせれば無分別な)行為に追い立てられるようにして過激な行動に走るという、同じぐらいありそうな筋書きも考えられる。
(翻訳:柴田裕之、後半へ続く)
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