ロシアへの「経済制裁」効いているのかいないのか 戦争が長期化するかどうかは経済状況次第

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また、ロシア産化石燃料の輸入禁止措置も、さまざまな技術的理由からその完全実現には時間を要するが、ロシア政府や産業界を強く動揺させるだろう。6月開催のG7エルマウサミットは、ロシア産金の禁輸に合意した。金は化石燃料に次ぐロシアの輸出品であり、発動のタイミングはやや遅きに失した感はあるが、この措置も一定の兵糧攻め効果を発揮するであろう。

このほか、ロシア・ベラルーシの道路輸送事業者によるEU域内での輸送禁止やロシア籍船舶のEU域内港湾へのアクセス禁止なども、EUと英国が共同決定したロシア産石油輸送タンカーへの保険禁止措置と相まって、金融・エネルギー制裁と比せば効果は小さいものの、ロシア企業に相当の打撃を与えるだろう。

実際の効果より政治メッセージ重視の制裁もある

一方、政府高官、議員、オリガルヒ(新興財閥)およびそれらの家族・親族の資産凍結・行動制限や、高級品・奢侈品・ハイテク品目の輸出制限・禁止、ロシアへの直接投資制限、最恵国待遇の剥奪、国際機関・国際的協調スキームからの排除、外交官の追放を含むそのほかの措置は、政治メッセージ的な意味合いが強いか、ないしは、あくまで中・長期的な効果があるものに限られる。

カナダ政府は、制裁措置の一環として凍結した個人や団体の資産を没収し、ウクライナの被害者補償に充てるための措置を検討していると表明した。仮に同様の措置をほかのG7や欧州諸国が採用したとしても、ロシア経済全体に大きな打撃を与えることにはならないが、オリガルヒやプーチン大統領の取り巻きの危機感や焦燥感を醸成する効果は期待できる。デュープロセス(法に基づく適切手続き)の問題が立ちはだかると思われるが、各国政府の知恵と工夫に期待したい。

以上のとおり、経済制裁は、特定のいくつかの措置を除いて、短期的な「兵糧攻め」効果を望むことはできない。しかし、ロシア経済の政策的封鎖が、企業と市民の行動様式や将来予測を悲観的なものへと変えることにより、経済活動に多大な悪影響をもたらす間接効果(市場ショック効果)は大きい。

英シェル、仏ルノー、米マクドナルドに象徴される300社超を数える外資系企業撤退のロシア市場への心理的・実際的効果も小さくない。6月26日、ロシアの外貨建て国債はついに債務不履行に陥った(ロシア側は認めていない)。通貨ルーブルの価値急落とこれに伴うロシア金融市場の混乱は目前である。

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