制裁の影響はすでに顕在化しているとみてよい。しかし、2014年クリミア併合に対する経済制裁の際にも制裁発動と実際の影響の間には一定のタイムラグがあった。その経験に照らすと、今回の制裁措置が目にも明らかな効果をもたらすのは、まさにこれからだといえる。
ソ連崩壊直後の経験に照らしてみれば、ロシアでは、GDPが20%落ち込むと、市民の生活が明らかに困窮化する。
逆に言えば、そのようにロシア市民の「冷蔵庫が空になる」(ロシア国民のプーチン政権への見方に大きな転換が生じるきっかけになるというスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ=ノーベル文学賞受賞者の発言)のは、現行の制裁措置が強力に維持されると仮定してもかなり先になるだろう。
ロシア市民による反戦活動拡大はすぐには期待薄
現在、ロシア国内では、国営メディアの世論操作が非常に有効に機能しているようである。そのため、紛争当初期待されたロシア市民による反戦活動の大きな盛り上がりは、これからもすぐには望めないかもしれず、ゆえに「プーチンの戦争」を早期に止めるためには、ウクライナがロシアを軍事的に打ち負かすか、ないしはロシア政府の戦費を干上がらす、いわゆる「兵糧攻め」に期待するしかない。
これまでに採用された制裁措置のうち、ロシア経済に極めて大きな打撃を与えうるのは、約6000億ドルといわれるロシア中央銀行の国際準備資産の一部凍結と、ロシア有力銀行のSWIFTやユーロクリア(国際証券決済機関)などからの排除の2措置である。
これらの金融制裁は、国有銀行・政府関連銀行の資産凍結・取引制限、VISAなどの民間国際決済システムの取引停止、Western Union社などによる海外送金サービスの停止によって補完されている。