国家公務員の「夏賞与最大減」に見る民間との差異 上場企業大幅アップの一方、最大減となった訳

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勤務時間の原則が突破される背景には、例外規定の存在がある。大規模災害への対処や重要法案の立案、他国との交渉など「特例業務」、国会対応や予算折衝といった業務に従事する職員には、上限を超えて超過勤務を命じることができるのだ。

国会で質問する議員から事前にヒアリングする「質問取り」や、それを踏まえた大臣答弁作成のため深夜まで待機する職員はいまだ多い。時に政治家からの理不尽な要求に悩まされることもある。

中央省庁のある30代官僚は「働き方改革が注目され、公務員にも改善に向けた動きは見えるものの、まだまだサービス残業をしている人は多い。『天下国家』のために自らを奮い立たせているが、公務員も普通の人間。民間には働き方改革を呼びかける一方で、自分たちは旧態依然の勤務を続けていることを考えると、身も心もギリギリの状態」と漏らす。

小学校低学年から進学塾に通い、最難関中高を卒業後、東大からキャリア官僚となった男性は地元でも評判のエリートだ。しかし、今年春の残業は月150時間を超え、自宅には「ただ寝るために帰る」だけの生活が続いたという。

メンタルヘルス不調者も増加傾向

人事院によると、メンタルヘルス不調で1カ月以上休んだ職員(長期病休者)の全職員に占める割合は1%を超え、増加傾向にある。それは地方公務員も同様で、総務省が2021年12月に公表した「メンタルヘルス対策に係るアンケート調査」によれば、メンタルヘルス不調の休務者がいる都道府県、市区町村は87.4%に達している。職員10万人あたり2250人で、この20年間で約7倍も増加した。40歳未満が46.2%と多く、役職は「末席」にあたる係員が72.5%を占めている。

内閣人事局による調査(2020年)では、30歳未満の若手官僚で「辞める準備をしている」「1年以内に辞めたい」「3年程度のうちに辞めたい」と回答した男性は約15%、女性は約10%に上り、その理由は「もっと魅力的な仕事に就きたい」が男性49%、女性44%だった。離職率は国家公務員が約5%、地方公務員は約1%と低いものの、長時間労働で仕事と家庭の両立が難しいとの声も目立つ。

老後の生活を支える年金でいえば、公務員は国民年金に加えて保険料が低率の共済年金にも加入することができていた。老齢基礎年金、退職共済年金、職域加算という3層にわたる年金は一般的なものと比べれば魅力的だ。しかし、2015年の年金制度改革で厚生年金制度に統一され、職域加算は廃止。保険料は徐々に引き上げられ、負担は増えている。

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