国家公務員の「夏賞与最大減」に見る民間との差異 上場企業大幅アップの一方、最大減となった訳

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コロナ禍のダメージが色濃い2021年冬の民間ボーナスは、労務行政研究所の調査で前年比マイナス1.9%、経団連の集計では前年比5.16%減となっている。国家公務員は0.3%のマイナスだったが、これは職員の平均年齢が0.4歳低下したことによる計算上のもので、実際には法改正が間に合わず今年6月のボーナスで遅れて調整された形だ。

松野博一官房長官は「国民の理解を得られる適正な結論を出すべく検討を行った結果、2021年8月の人事院勧告通りボーナスの支給月数を引き下げることを決定した」と説明している。

全国に約231万人いる地方公務員のボーナスも国に準拠している。地方公務員法は「職員の給与は国や他の自治体、民間の従業者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない」としており、多くの自治体ではそれぞれの人事委員会勧告に基づき支給月数が前年同期より0.075カ月分引き下げとなった。

残業も民間に比べて多い

民間に賃上げや働き方改革を求める国と「現場」の乖離はこれだけではない。それは「労働」そのものに及ぶ。2019年4月施行の改正労働基準法は、時間外労働の上限を原則「月45時間、年360時間」と定めた。労働基本権が制約される国家公務員は同法の対象外であるものの、人事院規則で同様の縛りをかけている。職員の勤務時間は「1日7時間45分、週38時間45分」が原則というものだ。

しかし、2019年の「国家公務員給与等実態調査」によれば、超過勤務の年間総時間が360時間を超えた職員の割合は全府省平均で22.0%に上る。本省庁の年間平均は356時間で、「720時間超」という職員も7.4%に達していた。民間の約130時間と比べて異様さは際立ち、長時間労働は常態化している。

内閣人事局が2020年秋に調査したところ、20代官僚の約30%、30代の15%が過労死ラインの目安となる「月80時間」を超える残業をしていた。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の職員は2021年1月の超過勤務時間が平均で約122時間、最も多い職員は約378時間に上ったという。

当時の河野太郎公務員制度担当相は「もう黒を通り越している」と是正に向けて取り組む考えを示したが、深夜までの残業が常態化する「ブラック職場」は簡単に変わりそうもない。総務省によれば、2021年4~6月に新型コロナ対応で月間上限を超える勤務をしていた自治体の職員は3カ月間で延べ11万6675人に上る。

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