日本人は「生物多様性」のど真ん中に生きている 茶道の文化から「命のつながり」が見えてくる

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また季節ごとに営まれるお茶事の1つに、秋から冬に「夜咄(よばなし)」と呼ばれるものがあります。冬にかけて長くなる夜を楽しむために、夕刻から始める茶事で、夜の暗闇の中、ろうそくの明かりだけで、ゆるやかに行われるお茶事です。お客は手燭と呼ばれる手持ちのろうそくをもって茶室に入り、暗闇の中でしめやかに行われます。

これはろうそくの明かりだけで行われるので、狭いお茶室はろうそくの油煙が広がってしまいます。そこで「夜咄の茶事」では、石菖(セキショウ)という茶花を使う、と決まっています。これは菖蒲のようないい香りがする葉で、ろうそくの油煙の広がる室内の空気を浄化すると言われています。これをにおい消しの“炭”に活けるのです。

セキショウを炭の中に入れて(c)WWF Japan

とても情緒ある営みですが、昔は多くの川岸などに自生していたこのセキショウも、開発や環境の変化などで減少してきています。こうした昔ながらの植物の多くが、失われていっています。

生物多様性の危機に私たちができること

高温多湿な気候がはぐくんできた多様な生物が息づく日本。季節感をこよなく愛し、大切にする日本文化。茶道のみならず、和食や俳句など、日本の豊かな生物多様性は多くの文化をはぐくんできました。心のふるさとと言ってもいいこれらの文化を大切にしたい、と思う方は少なくないのではないでしょうか。

危機に瀕している日本、そして世界の生物多様性に対して、私たちに何ができるのか、考えていきたいと思いませんか? その最初のステップは以下の3つです。

1. もっとよく地球の生物多様性について知ろう。日本の伝統文化はその宝庫!
2. 普段、生活の中で利用している製品が、どこでどのように作られ、手元に届いたのか、関心を持とう
3. 環境保全と資源を使い尽くさぬよう配慮して生産した木材や食料などを、消費者として選んで買うことも、生物多様性を保全する手段の1つ

今の子どもたちが成人する時代にもこの美しい季節感があってほしいと、心から願っています。

小西 雅子 WWFジャパン 専門ディレクター

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こにし・まさこ

2006年WWFジャパン入局、専門は環境エネルギー政策。18年昭和女子大学特命教授。22年京都大学大学院特任教授。ハーバード大学修士。博士(公共政策学・法政大学)。

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