日本人は「生物多様性」のど真ん中に生きている 茶道の文化から「命のつながり」が見えてくる
茶道は、「茶を飲む」という日常の行為を「道」に高めた日本文化です。お茶を点てるという行為は、禅や瞑想につながるものとして、慌ただしい日常の中、孤独な決断を迫られる企業経営層にもファンが多くいます。
茶道は、季節感を何より大切にしますが、それは高温多湿のアジアモンスーンがはぐくむ生物多様性の宝庫と実は深く関係しています。今回の記事ではその関係をひもといていきたいと思います。
季節感をこよなく愛する茶道
茶道は、ひとことで言うと、和やかで清らかな心を込めて、客人にお茶を点てていくことです。お茶を点てる人を「亭主」と言いますが、亭主がお茶事を開催するときには、季節やテーマを考え抜いて、茶道具や花、掛け軸などを整えていきます。いわば「季節感」というストーリーを味わいながらお茶を楽しむ時間を作り出します。
茶道の空間やお道具には、簡素なわび・さびの中に、無限の自然が再現されていますが、その原点は日本の高温多湿な四季で息づく多様な植物や生物です。私たちが当たり前と思っている日常は、豊かな生物多様性に支えられているのです。
私は気候変動やエネルギーを専門とする政策提言に従事する仕事をしていますが、実は幼いころから茶道家の母に師事して、裏千家茶道や小原流華道の家元教授という別の顔を持っています。
海外を飛び回る生活ですが、日本の季節の移り変わり、梅雨の走りに雨に打たれる小さな草花や、初秋に冴え冴えとした白い月などを見ると、魂が震えます。そのお茶の中には、季節感、ひいては日本独自の生物多様性がいかに息づいているか、改めて見ていきたいと思います。
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