「枯れた油田再生計画」は本当に実を結ぶか JXと三菱重が挑む夢の技術に原油安の逆風

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JX日鉱日石開発の試算では、EORによってウエスト・ランチ油田の生産量は日量ベースで平均20倍以上にまで飛躍的に増やせるという。「トータルでは約6000万バレルの増産が可能で、それを8~9年かけて取り出す」(中田賢明・常務執行役員)。同社はNRGエナジー社との折半出資会社を通じて、同油田の生産権益の5割(JX分は実質25%)を取得。原油増産で得られる収入により、プラント設備などの先行投資を回収するビジネスモデルだ。

実は、CO2によるEOR自体は世界で複数の実例がある。ただし、それらはいずれも近隣の原油・ガス田で発生した天然CO2を有効活用したもので、注入できる量も限られる。今回のような発電所の排ガスを使った原油増産はカナダで1件行われているだけで、純粋な商業ベースとしては世界初。それだけにエネルギー業界での注目度は高く、昨年9月の起工式には米エネルギー省の高官も駆けつけた。

CO2回収プラントの本丸

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「CO2による原油増産事業」の概念図

このプロジェクトを支えるのが三菱重工の設備技術だ。同社はCO2回収プラントの世界大手。関西電力と共同開発した高性能吸収液を用いた独自のプロセス技術を有し、1990年代後半から商用化。これまで化学工場向けの肥料増産のためのCO2回収設備を10基手掛けてきた実績がある。

その三菱重工が「CO2回収プラントの本丸」(飯島正樹・執行役員フェロー)として、早くから着目していたのが原油増産用途だった。石炭火力発電所の燃焼排ガスには、SOxやNOx、ダストなど多くの不純物が含まれる。このため、安定的にCO2だけを回収するには高度な処理技術が要求され、技術的なハードルが非常に高い。三菱重工は長年の技術研究に加え、国内外で行った実証実験で設備の信頼性を証明し、商用化に向けて営業活動を進めていた。

そうした中で舞い込んだのが、NRGエナジーからの誘いだった。排ガスのEOR活用を検討していたNRGエナジーは、三菱重工に対して設備面の協力とプロジェクトへの共同投資を打診。三菱重工はメーカーなので設備のみを引き受け、みずからが仲介役となって同じ三菱系の流れをくむJXを紹介し、プロジェクト参画企業の顔ぶれが決まった。

CO2回収プラントは、排ガスの脱硫設備、CO2吸収・再生設備、圧送設備などで構成される。WAパリッシュ発電所は米国最大の火力発電所だけに、建設する回収プラントも巨大だ。「規模としては、化学肥料工場などで使用される回収設備のざっと10倍以上」(三菱重工の飯島執行役員)。1日当たりの回収能力は4776トンと世界最大で、同発電所の燃焼排ガスに含まれるCO2の9割相当を回収する。

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