「野垂れ死のう」向かった座間市で予想外の顛末 「どんな人も見捨てない」福祉のプロの支援策

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座間市の風景(写真:Ricardo Mansho)
神奈川県座間市は人口13万人ほどの小自治体だが、今、困窮者支援の取り組みで注目を集めている。NPOなどの民間団体とタッグを組み、すでに困窮状態になっている住民だけでなくその予備軍にも救いの手を差し伸べている。座間市生活援護課は「どんな人も見捨てない」をモットーに、「命を守るサービス」を日々提供すべく奮闘しているのだ。気鋭のジャーナリスト・篠原匡氏の新刊『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』を一部抜粋し、「型破り」な自治体に救いを求めた人々の物語を通し、福祉の新しい形を探る。

人口13万人の座間市――。

高台から街を見下ろせば、似たような家が建ち並び、日暮れとともに灯が点る。最初はまばらに見えた灯りは、時を刻むごとにその数を増し、夜のとばりを美しく照らす。

遠くから見れば、その灯りはどこも穏やかで、温もりに満ちている。だが、実際に路地をさまよえば、雨戸が閉まったまま暗闇に沈んだ家もあり、また別の光景が広がっている。

見慣れたいつもの光景、変わらないいつもの日常──。だが、その内側までは見ることができない。

神奈川県座間市。神奈川県の中央部に位置する、人口13万人ほどの自治体である。相模川に削られた河岸段丘の東岸に開けた街で、市役所の屋上から眺めれば、静かに流れる相模川の水面が遠くに見える。

面積は約18平方キロメートルと神奈川県の中でも小さく、市の中心にある市役所からスクーターに乗れば、隣接する相模原市、海老名市、厚木市、大和市の市境に15分ほどで着いてしまう。

交通の便に恵まれており、市内や近隣を走る小田急線や相鉄本線に乗れば、東京都心や横浜などに出ることも容易だ。それゆえに、戦後の高度経済成長期になると、東京や横浜のベッドタウンとして発展した。

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