「あなたは人か奴隷か」問うゲームが爆売れした訳 シリーズ累計3400万本「バイオショック」の破壊力

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ラプチャーは何をきっかけに崩壊してしまったのか、ラプチャー創設者であるアンドリュー・ライアンはいったいどうなったのか、といったストーリーも『バイオショック』の魅力なのですが、やはり根底にあるテーマが本作を傑作たらしめる要素だといえるでしょう。

ラプチャーでは、アナウンスでこのような言葉をよく耳にします。

「アンドリュー・ライアンは聞いています。あなたは人ですか?それとも奴隷ですか?」

アンドリュー・ライアンは、選択する存在を人間、ただ従うだけの存在を奴隷と表現しています。これはラプチャーの住人や主人公のジャックに対してはもちろん、プレーヤーにも問いかけているのです。

ラプチャーは自分が何者かを確かめる旅路

そもそもテレビゲームというものは、開発者が作った道のりに従って進む娯楽であるといえます。自ら能動的にプレーしているのは事実ですが、指示に従っているにすぎないというのは否定できません。

また、現実世界でもこれは同じです。いまやSNSを見ていれば、勝手におもしろい話や有用な情報が流れ込んできます。しかし、おすすめやトレンドに出てきたものを甘受することは、自らの選択権をその媒体に委ねていることにほかなりません。そして、その生活が人間の思考をゆるやかに変えてしまう可能性は十分にあるでしょう。

画像は任天堂公式サイトより

さすがに「奴隷」という言葉は強烈すぎますが、しかしわれわれも「選択しているようで、ただ気持ちのいいほうに流されて従っているだけなのでは?」という可能性は否定しきれません。ゆえに本作が提示するテーマは、多くのプレーヤーに刺さるのです。

ラプチャーは単なる美しいディストピアではありません。そこを訪れた自分がいったい何者なのか確かめる旅路でもあるのです。

・遊べるゲーム機:Nintendo Switch、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、PC
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渡邉 卓也 ゲームライター

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わたなべ たくや / Takuya Watanabe

いわゆるテレビゲームを専門にコラム・評論などの記事を書くライター。大学卒業後はサラリーマンになったが、満足にゲームを遊べない環境にいらだちを覚えて転身。さまざまなメディアにゲーム関連の記事を執筆。駄作に対して厳しく書いてしまうことでも知られる。

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