ラプチャーは何をきっかけに崩壊してしまったのか、ラプチャー創設者であるアンドリュー・ライアンはいったいどうなったのか、といったストーリーも『バイオショック』の魅力なのですが、やはり根底にあるテーマが本作を傑作たらしめる要素だといえるでしょう。
ラプチャーでは、アナウンスでこのような言葉をよく耳にします。
「アンドリュー・ライアンは聞いています。あなたは人ですか?それとも奴隷ですか?」
アンドリュー・ライアンは、選択する存在を人間、ただ従うだけの存在を奴隷と表現しています。これはラプチャーの住人や主人公のジャックに対してはもちろん、プレーヤーにも問いかけているのです。
ラプチャーは自分が何者かを確かめる旅路
そもそもテレビゲームというものは、開発者が作った道のりに従って進む娯楽であるといえます。自ら能動的にプレーしているのは事実ですが、指示に従っているにすぎないというのは否定できません。
また、現実世界でもこれは同じです。いまやSNSを見ていれば、勝手におもしろい話や有用な情報が流れ込んできます。しかし、おすすめやトレンドに出てきたものを甘受することは、自らの選択権をその媒体に委ねていることにほかなりません。そして、その生活が人間の思考をゆるやかに変えてしまう可能性は十分にあるでしょう。
さすがに「奴隷」という言葉は強烈すぎますが、しかしわれわれも「選択しているようで、ただ気持ちのいいほうに流されて従っているだけなのでは?」という可能性は否定しきれません。ゆえに本作が提示するテーマは、多くのプレーヤーに刺さるのです。
ラプチャーは単なる美しいディストピアではありません。そこを訪れた自分がいったい何者なのか確かめる旅路でもあるのです。
・公式サイトはこちら
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら