共感しかない「25歳女性の恋」をゲームにした凄み まるで大人の絵本のような傑作「Florence」

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恋愛をテーマにしたゲーム『Florence』の魅力に迫ります(画像は任天堂公式サイトより)
「テレビゲーム」は子どもがやるものと思われがちですが、書籍や映画ともまた違う独自のシリアスな、あるいはユニークな作品が多数あります。その魅力は奥深く、大人の趣味として楽しめるほどに成熟しているといっても過言ではありません。
そこでこの連載では、ゲームの評論やコラムを10年以上書き続けているゲームライター、いわばゲームを遊ぶプロである渡邉卓也氏が、ゲーマーからは人気でも一般的にはあまり知られていないであろう著名な作品や傑作を紹介します。
第1回は、美しいアートとサウンド、そして優れた体験によって恋愛の機微を描いた『Florence』です。

正直なところ、私は“恋愛をテーマにした作品”といわれると「なんだか陳腐だな」という先入観を持ってしまいます。そのくらい恋愛は普遍的なテーマであり、誰もが語りたがるものなのですから。

しかし、『Florence』を遊んだときは驚きました。恋愛の物語として極端に珍しいわけでもないのですが、自分がプレーヤーとして体験することでとても深みが増すのです。つまり、『Florence』はゲームだからこそ描ける稀有な体験を提供してくれるすごい作品といえるでしょう。

25歳、独身OLの退屈な日常とステキな出会い

本作はオーストラリアのゲームスタジオ「Mountains」によって制作された作品で、アメリカの権威あるアワード「The Game Awards 2018」でベストモバイルゲームを受賞しています。2019年のイギリスのアカデミー賞でもモバイルゲーム賞を獲得しており、高い評価を得ているといえるでしょう。

プレーヤーは、25歳の女性「フローレンス・ヨー」となり、彼女の日常を体験していきます。その生活はミニゲームとして描かれており、それを実際に体験していくのです。

例えば歯ブラシを左右に動かして歯を磨いたり、同じ数字を見つけてタップする仕事をこなしたり、あるいは適当に晩ごはんの寿司を食べたります。どのミニゲームもたいしたことのない作業で、どこか退屈。その退屈さこそが彼女の日常を表現しています。

(画像は任天堂公式サイトより)

しかしある日、彼女は街中で心地よい音楽と出会います。音が聴こえるほうへふらりと歩いていくと、そこにはチェロを演奏するクリシュという男性がいました。この出会いが彼女の日常を変えていくのです。

次ページ「恋愛の機微」がゲームとして描かれる
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