最低賃金を時給1200円に上げるのが得策と見る訳 経済学の定石では先に上げるのは愚策とされるが
従業員人口の約4割は中小企業の正社員で、こちらは景気が上向かない限り、給料は上がらないのですが、雇用が約束されているという点では恵まれています。
最も苦しい状況にあるのが従業員全体の約4割を占める非正規労働者です。こちらは多くの場合、最低賃金近辺に給与水準がはりついています。フルタイムで働いてもワーキングプアと呼ばれるひとたちは主にこの層に属します。
値上げラッシュによる生活苦はこの3層のうち、最も収入の苦しい層で顕著に起きている現象です。実はいちばんの「大企業の正社員層」は小麦製品の価格が15%上がっても消費を減らさない行動傾向があります。
つまり「デパ地下で意外な高額商品が売れています」といったニュースに登場する層と、「値上げラッシュでスーパーでは価格の安いプライベートブランド(PB)商品の売り上げが増加しています」といったニュースに登場する顧客層は、まったく別の所得階層なのです。
大企業正社員だけが恩恵を受けて格差が広がっている
そして結局のところ日本の経済政策がうまくいっていない最大の理由はこの点です。アベノミクスで大企業だけが利益を増やし大企業の正社員だけがその恩恵を受けているけれども、それは上位2割の所得が増えて国民の間の所得格差を広げているだけになっています。
ではどうすればいいのか?
実は生活が苦しいひとたちの所得が大幅に増えるようになれば経済が回転するようになります。値上げ幅よりも所得増が多ければ、電気代が上がっても、パスタや麺類の価格が上がっても、今までと同じ商品を購入し、生活のスタイルを変える必要もなくなります。デフレスパイラルでは節約が日本の経済を縮小していったのと逆の動きが起きることになります。そして春闘で高収入の人の給与を上げてもらうのには時間がかかりますが、最低賃金のルール変更なら与党がそう決めればすぐに実行できます。
そこで過去に格差が開いたことも加味したうえで、最低賃金を現在の全国平均930円から1200円へと大幅に引き上げたらいいのではないかというのが冒頭の主張です。問題はそんなことをすると逆に雇用が減ってしまって経済が悪化し、下流世帯の所得も増えないのではないかという経済学の常識から来る懸念です。
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