おぼん・こぼん「人生チャンスは3回」不仲も活かす 華麗なデビューから57年、齢70歳過ぎて輝く訳

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型に、枠にはまる必要はない――。その一方で、「売れる」ことは常に意識しないといけないと付言する。

「笑うか笑わないは、売れてるか売れてないかです。売れていれば、人間って簡単に笑います。だから、絶対に売れなきゃいけない」。おぼんが、真顔に戻って説く。それを受けて、こぼんが「横山やすし・西川きよし」を例に挙げて説明する。

こぼん:「僕らは、やすきよの全盛期を見ているけど、彼らが出てくるまで、お客さんはダラっとしているんです。ところが、舞台のめくりが「横山やすし・西川きよし」になるや、お客さん全員が前のめりになる(笑)。ぐっと身を乗り出すんです。あきらかに、見る姿勢が違う。売れることで、より見てもらえるようになるんです」

おぼん:「だから、俺は今でも売れることにこだわる。俺たちのことを見てもらいたいもん。それだけのことをやっているって自信があるから」

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このタイミングで、おぼん・こぼんが再脚光を浴びたのは偶然ではないのかもしれない。漫才一つとっても、型や枠にはまらないケースが増え、「あれは漫才だ、いや漫才じゃない」なんて議論を呼び、演者の表現方法も多様化している。

こぼんは、「『水曜日のダウンタウン』の影響は、現象のようなもの」と冷静に客観視するが、万(よろず)の才にこだわり続けてきた2人だからこそ、売れている者、売れていない者、双方に響く言葉があるのではないか。

東洋館では、この瞬間も、きしむ音が聞こえてくるような狭隘な場所で、芸人たちがネタ合わせを繰り返している。

おぼんは、「人間って生まれて死ぬまで大きなチャンスが3回ある」と教える。

食うには困らないけど、このままで終わるのは嫌

おぼん:「俺らで言えば、1回目はデビューしたとき。素人オーディション番組で勝ち抜きプロになった。2回目は『お笑いスター誕生!!』で10週勝ち抜いて、世に出たとき。漫才ブームが終わって、食うには困らない……、人並以上の生活はできていたけど、「このままで終わるのは嫌だ」なんて思っていたら、『水曜日のダウンタウン』で3回目が訪れた。その3回のチャンス、すべて活かせたおぼん・こぼんって、自分で言うのもなんだけど素敵だなって思う。だからこれは、やっぱりコンビ別れしなかったから良かったんだなって」

人には、人生を変えるチャンスが3回巡ってくる――。おぼん・こぼんから教わることは、まだまだありそうだ。

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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