同性愛者3人の共同生活、結婚は認められるべきか 同性婚と多重婚を遺伝子、社会的役割から考察

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冨田:すごくいいことに気づきましたね! 現在の日本では同性カップルに寛容な自治体もありますが、国は同性婚をまだ認めていません。それに対して民間から訴訟が起きて、2021年春に札幌地方裁判所が出した判決では、「憲法二十四条は異性婚について定めたものであって、同性婚についてのルールがないこととは別問題である」としたんです。

斎藤:つまり……?

冨田:政府は早く法整備をしなさい、ということですね。

斎藤:なるほど(笑)。

冨田:それと同時に、同性だからという理由で異性婚のカップルが享受できるメリットを享受できないことは、憲法十四条で規定される「法の下の平等」に違反する、と裁判所が言ったんです。

斎藤:おお。それは大きな前進ですね。

冨田:そう思います。だから同性婚に向けては、まさに前進している最中です。では多人数婚はどうでしょう?

斎藤:うう、こっちが難しい……。それなりに条件をつけたり、審査をするなりして多人数婚を認めてもいいのかな、という気がしてきました。ただ……そんな法改正、日本では絶対に無理だと思いますけど。

線引きをどこに引くか

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冨田:結局、法律というものは線引きなんですね。なにがOKで、なにがNGなのか。その線引きは時代によって少しずつ変わっていくんですけど、新しいところに線を引いても必ずその線ギリギリのところで漏れた人は不満を持つのです。

同性婚については、新たな線引きによっていずれOKになるでしょう。5年先か、10年先かわかりませんけど、少なくとも斎藤さんの世代が社会の中核になるときには変わっていると思います。そのとき、事実婚でも国が守ってくれる制度もできているかもしれません。

しかし多人数婚に関しては、やはり例外中の例外すぎて線引きの内側には入らないと予想しています。一夫多妻、一妻多夫、同性三人婚などの多人数婚は、当事者全員が納得して望んでいるんだったら、国は邪魔せず支援すべきだとも思いますけど、法律的にはたぶん難しいでしょうね。

冨田 勝 慶應義塾大学先端生命科学研究所所長

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とみた まさる / Masaru Tomita

1957年東京生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、米カーネギーメロン大学(CMU)に留学し、コンピュータ科学部で博士課程(1985)修了。その後、同大学助手、助教授、准教授、CMU自動翻訳研究所副所長を歴任。1990年より慶應義塾大学環境情報学部助教授、教授、学部長を歴任。2001年より慶應義塾大学先端生命科学研究所所長。米国National Science Foundation大統領奨励賞(1988)、日本IBM科学賞(2002)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2007)、ほか、多数の賞を受賞。著書に『みんなで考えるAIとバイオテクノロジーの未来社会』(かんき出版)などがある。

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