同性愛者3人の共同生活、結婚は認められるべきか 同性婚と多重婚を遺伝子、社会的役割から考察
斎藤:ちなみに、性的マイノリティの人の性染色体ってどうなっているんですか?
冨田:同性愛者の遺伝子を調べる研究はいろいろされてきているんですが、性染色体異常や独特の遺伝子パターンがあるかというと、はっきりとしたエビデンスはまだありません。約50万人の遺伝子を調査した米ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)による2019年の研究では、単一の「ゲイ遺伝子」というようなものが存在しないことが明らかになっています。では生育環境に影響されるのかというと、それもはっきりしたエビデンスは見つかっていません。
斎藤:LGBTQの人たちの人数はどのくらいなんですか?
冨田:日本の民間団体による調査では、LGBTQは人口の8〜10%前後といわれています。ということは約10〜12人に1人。これって非常にリアリティのある数字だと思うんです。
斎藤:なんか……左利きの人の割合のほうが少なそう……。
冨田:実際にそうなんですよ。日本だと利き手の矯正をする親が多いから、左利きって5%くらいしかいないと考えられています。でも、自分の周りに左利きの人がいたからといって、「利き腕異常」などと差別することはないですよね。
同様に、現代社会において性的マイノリティを差別的に見ることは、見識が浅く教養に乏しいことだと思います。
子孫を残すことだけが人間の価値ではない
斎藤:LGBTQを議論するとき、よく「子孫を残せないこと」が話としてあがる気がします。国が結婚を認めたら養子縁組はできるんでしょうけど……。このあたりはどう考えたらいいですかね。
冨田:人類のように役割分担して生きていく社会性生物の場合、子どもを産むことだけが種の繁栄に貢献する方法ではありません。社会システムの一翼を担ったり、税金を納めたり、他人の世話をしたりして、人間社会に貢献することができます。子どもを持たない人やLGBTQもまったく同じで、さまざまな形で社会に貢献できます。
斎藤:社会全体で進化していけばいい、と。
冨田:そういうことです。地球上のヒト以外の生物は、遺伝子という形でしか次世代に情報を伝え残すことができません。だから自然選択と性選択で進化するしかありません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら