同性愛者3人の共同生活、結婚は認められるべきか 同性婚と多重婚を遺伝子、社会的役割から考察
斎藤:でも人間社会ではそんなことはないですよね。
冨田:はい。たとえば、日本には重婚を禁止する法律がありますしね。憲法と民法でこんな風に書いてあります。
「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない」
斎藤:意外と知りませんでした。
冨田:日本は法治国家だから法律を守らなければならないことは大前提ですけど、ここではそもそもなぜそんな法律があるのかを考えてみます。実は、一夫一妻制は日本人にとっては新しい概念です。どこから来たかというとキリスト教です。キリスト教は基本的に重婚を認めませんからね。それが明治期に日本に入ってきて、法律として採用され、日本人は「結婚は一夫一妻が当たり前だ」と思うようになったのです。冷静に考えてみれば、日本って一夫多妻制の時代のほうが圧倒的に長いんですよ。
斎藤:そうなんですか?
冨田:たとえば、戦国時代の殿様には正室のほかに側室がいましたよね。織田信長は9人の奥さんがいたそうです。「日本の近代化の父」といわれる渋沢栄一も正式な妻ではないパートナーが3人いたとされています。諸説ありますが、渋沢は20人以上の子どもがいたといわれています。幕末はそれが普通だったようです。
そして縄文時代から、権力やお金を持っている人は多くのパートナーを得てきたというのは、紛れもない事実といえるでしょう。
斎藤:もしかして福澤諭吉先生も……。
冨田:いや、福澤は一夫多妻否定派で、西洋のように一夫一婦制を支持していたようです。そもそも近代社会以降においては、性選択によって人類が進化する、という概念はほぼなくなったでしょう。一夫一妻制によって、過度な競争なく安定した家庭を築き、知的な活動によって人類社会が進化する、という世の中になったのだと思います。
LGBTQという個性
冨田:オスとメスについていろいろ話をしてきたので、ここで性的マイノリティ、いわゆるLGBTQの話もしましょう。
LGBTQとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性自認が身体の性別とマッチしない)、そしてクエスチョニング(自分でも性別がよくわからない)、などの人たちをいいます。近年、日本でもLGBTQをカミングアウトする人が増えてきて、性的マイノリティの方々に対する差別が少しずつ薄れつつあります。
斎藤:僕の知り合いにも何人かいます。
冨田:人間には男と女のどちらかの性別を持っていることが当たり前だと思っている人が多いのですが、生物学的にも染色体レベルでも、男性と女性を明確に区分けすることができないケースがあるということです。
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