「腸は第2の脳」汚れた腸が「うつ病」「不眠」を招く サプリより効果あり?腸活+脳活に効く食べ物

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のみならず近年の研究から、炎症反応を抑え、免疫機能の正常化を助けて、糖尿病、皮膚炎、神経障害、睡眠障害等の症状の改善や、感染防御、アレルギーの抑制といった効果が得られることもわかってきた。

ただし、単一のプロバイオティクスをサプリで摂り続けることは、お勧めしない。有害でなくても、おそらくコストに見合う効果は得られないからだ。

アメリカの最新研究では、18~43歳の健康な男女30人を2グループに分け、単一種のプロバイオティクス(乳酸菌)と偽薬をそれぞれ30日間摂取した後、便を調べた。結果、両グループで腸内細菌叢の多様性には十分な差が見られなかった。

外から入れたプロバイオティクスは、腸内に定着しないようだ。また、善玉菌の種類によっては、一時的に増えたものもあれば、減ったものもあった。しかも、摂取をやめて1カ月ほどで通常レベルに戻ってしまった。

「それだけ摂っていればキレイな腸を維持できる」サプリなどないのだ。

複数のプロバイオティクスを含むサプリもあるだろうが、それでも限られた種類を取り続けることになる。やはり自然界の多様性にはかなわない。

お金をかけず「腸活+脳活+楽しみ」を手に入れる

サプリにお金をかけなくても、プロバイオティクスを摂れるお手軽な方法がある。ヨーグルトや納豆、みそ、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品(乳酸発酵)を、偏らずにいろいろと、適量ずつ毎日食べよう。

また、プロバイオティクスを増やし、腸内細菌叢の機能を高めるには、エサとなる「プレバイオティクス」が必要となる。プレバイオティクスの代表例は、食物繊維やオリゴ糖だ。

食物繊維は野菜、果物、豆類、キノコ類などに多く含まれる。特に、腸内細菌が分解しやすく短鎖脂肪酸を生み出しやすい「水溶性食物繊維」を意識して摂るといい。

水溶性食物繊維の豊富な食品としては、大麦(押麦等)、大豆(納豆、きな粉等)やいんげん豆などの豆類、らっきょう、ごぼうやかぼちゃなどの根菜類、いも類、海藻類、果物などがある。

オリゴ糖は、豆類、たまねぎ、ねぎ、ごぼう、アスパラガス、ブロッコリー、カリフラワー、アボカド、バナナなどの食品に多く含まれる。「特定保健用食品」として市販されてもいるので、食事の際に砂糖をオリゴ糖に置き換えて使うと効率的に摂取できる。

というわけで腸をキレイにする食べ物、私のイチ推しは「押麦ごはん+納豆」だ。どうしても外食ばかりという人も、ご飯には納豆を1品追加されたい。納豆が苦手なら、「ヨーグルト+オリゴ糖」をおやつにしよう。

嫌いなものを無理に食べ続けたり、サプリでお腹いっぱいにしたりする必要はない。正しい知識に基づいて、おいしく腸活をしていこう。食べる楽しみと脳活まで手に入る。私のような欲張りにはピッタリだ。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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