年後半のアメリカ景気、インフレ、円安はどうなる みずほ証券・大橋英敏氏に金融市場見通しを聞く
――2022年10~12月期から来年の前半はかなり厳しくなりそうですね。欧州はもともとアメリカほど需要が強くないですが、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は積極的な利上げ姿勢に転換しました。
9日の政策理事会で7月の0.25%の利上げに加え9月に0.5%以上の利上げの可能性を示唆したことで、イタリアなど南欧諸国の国債利回りがドイツの国債に対して大きく上昇した。このため、15日に緊急理事会を開いて、これに対処しますという羽目になった。今後、南欧諸国の利回りが大きく上昇したら、国債の買い入れを増やすということだろう。そうなることぐらいわかっていただろうにとも思う。
マイナス金利政策は副作用があるので長く続けたくない、よってインフレを言い訳に止めたいというのはわかる。ところが、政策金利がプラスに浮上した後、9月以降も0.5%利上げするかもしれないといったので、市場がびっくりした。利上げの可能性を発表しドイツ国債利回りが上昇したにもかかわらず、ユーロが対ドルで下がったことや、格付けがAAの社債のクレジットスプレッドも急上昇したことに、市場の不信感があらわれている。アメリカよりも先行きが不透明ということだ。
新興国はトルコ以外に大きな不安はなさそう
――スイス中銀も利上げしましたね。日本を除く各国が利上げ競争の様相で、通常こうなるとインフレに対して脆弱な新興国のリスクが注目されます。
インフレが高い水準になると金融政策や財政政策が自由にならなくなるのが怖いところ。日本のように外貨建て債務が少ないと急に問題になることはないが、新興国の多くは経常赤字で外貨建て債務が多いので問題となりやすい。だが、今回は、新興国のうち資源保有国は資源価格の上昇で、史上最高の経常黒字を計上したりしている。渦中のロシアが典型だ。その意味で、いつも問題になる新興国通貨、南アフリカ・ランドやブラジル・レアルが小じっかり、という状況だ。メキシコ・ペソなどは米ドルよりも強くなっている。
インフレになりやすく、資源のない国として、リスクの高い国の代表はトルコ。潜在的にはインフレに弱い経常赤字国のインドも問題になりやすいが、今回は西側から閉め出されたロシアから安価でエネルギーを買っているので、インフレを抑え込めている。インドは人口が多いので、資源や穀物は死活問題で、現実外交を展開している。
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