年後半のアメリカ景気、インフレ、円安はどうなる みずほ証券・大橋英敏氏に金融市場見通しを聞く

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おおはし・ひでとし/みずほ証券シニアエグゼクティブ兼金融市場調査部チーフクレジットストラテジスト。同志社大学卒、大阪大学大学院で修士号取得(経済学)。1991~日本生命保険で運用に携わり、2000年からモルガン・スタンレー証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)、2012年にジャパン・クレジット・アドバイザリー株式会社を創業。2015年12月よりみずほ証券。専門は債券・クレジット市場。『クレジット投資のすべて』等著書多数(写真:みずほ証券提供)

ではどういう条件なら利上げを止めるかといえば、パウエル議長は雇用が悪化するとか、インフレ率が低下するとか明確なエビデンス、それも数カ月続くことが必要だとしている。

過剰需要だったアメリカでも足元では住宅販売が急失速するなど過剰消費は沈静化しつつある。しかし、インフレ率の高止まりがまだ続き、パウエル議長は「コア(エネルギーや食品を除く)ではなく、ヘッドライン(総合)インフレで見る」「消費者のインフレ期待にとってはそちらが大事だ」とのニュアンスの発言をしつつ、「中央銀行にできないこともある」という話もしている。

エネルギー・穀物など地政学による供給制約は中銀にはどうにもできないからだが、11月に中間選挙を控えたバイデン大統領の指示もあって、とりあえずこれまでにない勢いで利上げをする。そうすると景気は悪くなる。6月のFOMCの肝はこれを認めるステップだったということだろう。

今年の第4四半期(10~12月期)から景気後退も

景気後退が見えてきたが、市場は先行きが不透明なことを最も嫌うので、悪くなるなら早く「底」をつけてほしいと思っている。今回の0.75%はその意味ではよかった。利上げを続けている間は、金融市場はボラタイル(変動率が大きい)状況は続くが、気の早い人は株式や債券を徐々に買っていると思う。

――景気後退はいつごろからになるでしょうか。

景気後退の定義は2四半期以上のマイナス成長だが、今年の第4四半期(10~12月期)、2023年第1・第2四半期はマイナス成長になり、第3四半期から浮上するという可能性もある。インフレの状況にもよるが年間で見ると2022年、2023年ともわずかながらプラス成長かもしれない。

――供給制約によるインフレの影響をどう見ますか。

供給制約によるインフレには2つある。欧州のエネルギー価格などはロシアからの天然ガスの供給が絞られるので代替エネルギーの価格も上昇する。もう1つのタイプは、新型コロナが流行を始めた頃のマスクのように、皆が供給制約の思惑から買い占めに走るから供給制約に陥るというもの。今のインフレにはそういう側面があるのが困ったところだ。サプライチェーンが分断されているので、トータルではモノはあっても皆が在庫を抱え込んでしまう。いろんな業界でそういうことが起きている可能性がある。

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