年後半のアメリカ景気、インフレ、円安はどうなる みずほ証券・大橋英敏氏に金融市場見通しを聞く

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――需要を押さえ込むという点においては金利引き上げの効果はもう出ているわけですね。雇用指標はまだ強いですが、これから弱くなりますか。

賃金も前年同月比の上昇率が4月はほぼ横ばい、5月は減速している。4月~5月にかけてアメリカ企業の1~3月期の決算発表が行われたが、多くの企業がすでに労働需給の逼迫と言わなくなった。

GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)などもすでに新規採用を止めているし、テスラはレイオフを発表した。巣ごもり需要がなくなったため、アマゾンも倉庫を返したりしている。労働組合結成の動きが広がっているがこれは予想されるレイオフに対抗する意味もあるだろう。GAFAMの一角はおそらく1~2カ月でリストラを発表するとみている。これからアメリカではレイオフが増えるだろう。

住宅の需要も落ちている。今回は資材価格が高いために価格は下がりにくくなっている。不動産価格がこのところ上昇した理由にはコロナ下での財政出動やライフスタイルの見直しというのもあるが、いちばん大きいのは建築資材価格の上昇だ。ただ、需要が落ちれば人が要らなくなる。また、住宅需要が減れば耐久消費財などの購入も減る。需要の減少が半年も続けばさすがに不動産の価格も少し下がるだろう。

中国は回復方向だが大きな景気刺激策はやらない

――中国経済をどう見ますか。

足元はかなり回復しているようだ。上海のロックダウンはかなりの想定外だったが、今後は4~5月のようなロックダウンは上海ではやらないだろう。上海は特殊な都市で、人口が多く、工場もあるし、物流の拠点でもある。ここを止めたら、世界経済へのインパクトが大きいことを中国当局も認識した。ここから先、中国のゼロコロナ政策で世界経済が悪化するというシナリオは書かなくてもよいと思う。

――習近平国家主席は「ゼロコロナ」の旗は降ろさない感じですが、実際の運営上は経済を回していく方向に舵を切ったということでしょうか。

その通りだ。例えば、昨年キーワードになった「共同富裕」についても旗は降ろしていないが、今年は積極的に話題にしていない。11~12月の共産党大会で北京には全国から人が集まるので、相当厳しいコロナ対策をすると思うが、北京であれば経済的にはそんなに問題にならない。そこは都市によって使い分けするのではないか。

中国は厳しいゼロコロナ政策を採ったために集団免疫ができておらず、感染状況はまだ気になる。一方、期待できる点もある。シノバックが作った不活化ワクチンはオミクロンにはまったく効果がないとされたが、開発中の中国製のmRNAワクチンができれば、ゲームチェンジャーになりうる。この承認は中国経済を見るうえで注目に値する。

2022年の中国の成長率は後半回復しても4%台にとどまるだろう。リスク要因ではなくなってくるが、2023年も5%程度の成長が目標であり、アメリカや欧州の景気落ち込みをカバーするようなことは期待できない。

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