中央大学を「中退」した33歳フリーライターの末路 夢のため自分を追い込み予想より追い込まれる

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そこで振ってもらった仕事が、2015年当時需要が高まっていたWEB記事が中心だったことも、三上さんの人生を好転させた。ページ数が決まっている紙と違い、WEB媒体はベテランライターと誌面の枠を争う必要もない。スケジュールも比較的柔軟で、数をこなしやすかったという。

「当時はWEB記事の原稿料の単価や、量も増えていた時期だったんだと思います。WEB媒体の編集者は『好きなだけ書いて!』と言ってくれるし、なおかつ翌月に原稿料が振り込まれます。それまで残業代の概念が存在しない世界線にいた自分には、働いた分だけ稼げる感覚がとても新鮮で楽しかったです」

中退したことを今はどう思っている?

そんな彼は今、自身がかつてした中退という選択をどう思っているのだろうか。

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「身も蓋もないですけど、そりゃ『卒業したほうがいいよな』とは思います。生活が苦しくなった時に、就職して安定した生活がしたいと考えたことは何度もありました。

でも、学歴不問(実質高卒)の仕事しか選択肢がないと、やっぱり、ブラック企業を引く確率は上がるんですよね。結果的に収入も安定しないので、一人暮らしの頃はホームレスやネットカフェ難民って本当に紙一重なんだなと思っていましたから。

冷静に考えると、『1年留年して卒業するくらいの労力は、中退後の2〜3年で結局費やしたよな』感もあるし、どちらかというと私の場合はマイナスだったと感じます。でも、職業ライターとして今、それなりに納得できる現状でもあるので、帰納法的には『明確にやりたいことあって、しっかり考えての決断ならアリ』って感じなのか……難しいですね」

複雑な胸中のようだが、もっとも、「一時は履歴書に書くのも辛かった」という中退の過去も、今ではこう考えているという。

「職種にもよると思いますが、少なくともライターという仕事には学歴は関係ないし、年齢を重ねると『仕事ができるか』が重視されていきます。月日が経つほど過去の学歴とか関係なくなるし、強く意識する機会も減ると思うので、すでに中退して現状つらい方には、きっと年々ラクになるよとは伝えたいですね」

就職難だった時代に敷かれたレールから外れて歩んでいくことは、決して容易なことではなかった。自由には責任が伴うという言葉もあるが、筆者は三上さんの話を聞いていたなかで「ホームレスも紙一重だったと思った」という言葉に、とてつもない重みを感じた。

自分の人生を振り返ったときに「中退して良かった」と言えるか否かは、必ず立ちはだかる“自由の代償”に立ち向かう信念があったかどうか、なのかもしれない。

本連載では、取材を受けてくださる中退経験(大学中退、高校中退など)のある人を募集しています。応募はこちらのフォームにお願いします。ヤフーニュースなど外部配信サイトでご覧の方は、東洋経済オンラインの本サイトからお願いいたします。
越野 真由香 ライター

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こしの・まゆか / Mayuka Koshino

1992年、神奈川県生まれ。自閉スペクトラム症児を育てるシングルマザー。WEBメディア編集部にて執筆・編集経験を積み、会社員として働きながら執筆中。
 

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