飢えはしないが、未来の見えない生活が続く日々。不安が募り、出版以外での正社員の枠も検討したこともあったそうだが、そこで感じたのは学歴の壁だった。
「正社員の求人を見ると、やっぱり四大卒の条件が多いんです。自分を追い込んだだけあって、本当に追い込まれたというか(笑)」
その後、ホテルのベッドメイクやタクシー運転手の仕事に就いたこともある。
「『記事のネタになりそうな現場』かつ『居心地よければ定着しよう』くらいに考えていたんですが、どちらもそんな甘い考えで続く仕事ではありませんでした。
とくにホテルの仕事は正社員雇用でしたが、キツかったです。1日2万歩くらい歩いて、毎朝、身体の節々が痛かった。外国人労働者と一緒にめちゃくちゃコキ使われて、『自分は何で今ここで、この仕事をやってるんだ?』と。ひとり誰もいない部屋に帰ると、当時は凄まじい孤独を感じていました」
転機となったふたつの出会い
だが、月15万円程度の仕事を転々としていた彼にも大きな転機がふたつ訪れる。ひとつはネタ探しがてら参加した飲み会で、現在の妻と出会ったことだ。
「彼女はお堅い仕事をしていて、20代にして高収入でした。同棲を始めた結果、生活のためのバイトの量を減らすことができたんです。
ライターとして営業らしい営業もほぼしていなかったんですが、『バイトを入れすぎて、いざ仕事がきても受けられない』という悩みがずっとありました。当時は紙媒体の仕事しか経験がなかったんですが、紙って取材や入稿のスケジュールがタイトで、バイトとの調整が難しいんです。
だから、彼女のおかげでライターの仕事に集中しやすい環境になったのは間違いないですね。具体的には、当初半年ほど家賃を立て替えてもらって……ちなみに、後日ちゃんと返しました」
また、同じ頃に三上さんを支えてくれる恩人がもうひとり現れた。
「もともと知り合いだった実話系の編集者の方が別の出版社に転職し、たくさん仕事を振ってくれるようになったんです。超やり手で顔も広い人だったので、いろんな編集者にどんどん自分を紹介してくれて……。正直なぜそこまで引っ張り上げてくれたのかは今でも謎ですけど、その人がステップアップするのに合わせて、営業力皆無の僕も仕事の幅が広がっていきました」
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