星川氏はトラックマンを動かす際のオペレーターやメンテナンスするためのアルバイトを雇用している。その中にはデータ部門を担当する大学の野球部員もいる。
彼らはトラックマンの操作を学び、データを取得し、分析する方法を学ぶ。アルバイトをしながら、データアナリストとしての実地の経験を積んでいることになる。
また、全国を飛び回る中で出会った高校球児の中にはアナリストを目指す野球部員が全国でたくさん出てきているという。星川氏は、こういう形で全国のプロ、アマの野球の現場へ足を運ぶうちに「野球界の現状」に強い危機感を抱くようになった。
「うちのアルバイトで、大学まで野球をやっていた子がいて、彼は間違えたときに“すいません”しか言わないんですね。どうしてこうなったの、と聞くと“すいません”と。いや、そうじゃなくて再発防止策を打たないとけないから原因を明らかにしないと、と言っても彼は謝ることしか頭にない。
もちろんこう言ったケースは一部だと考えたいですが、誤解を恐れずに言えば今のアマ球界の選手と指導者の関係性を考えれば、そういう子が多く出てくる可能性は否定できない。現状を把握して、改善や提案が自発的にできる優秀な人材がでてくる可能性は低いと言わざるを得ない。
一流企業の経営者で『甲子園を目指して野球をやっていました、そこでの経験がいまに生きています』と言う人は本当に少ない。他の競技では良く見聞きするのですが、競技人口が圧倒的に多い野球でそれをほとんど聞いたことないのは一体どういうことなんだろうか?と思います」
野球をもっとインテリジェンスなものに変えたい
「僕は、トラックマンなどの導入を通じて、野球をもっとインテリジェンスなものに変えていきたい。アメリカンフットボールやラグビーなどは肉体がぶつかり合う激しいスポーツですが、インテリジェンスの香りがする。でも、野球はそうじゃない。アメフト、ラグビーは試合中は、監督が指示を出せないから、選手が臨機応変に判断して動かないといけない。でも野球は、他の競技と比較して監督・指導者の指示に従う、という側面が試合だけでなく練習でも強い気がします」
「野球の監督ってなぜあんなに偉そうで指示が一方的なんでしょうか?」と星川氏は疑問を呈する。
「いまどきの会社であんな人なかなかいないですよ。上司の顔色を伺って怒られることを避けることを常に気にしている指示待ち社員しかいない会社が成長しないのと同じで、そんな文化で育った選手が、この後それぞれの世界で活躍する可能性は低いと言わざるをえない。
そうならないように心がけて指導されている素晴らしい監督さんを何人も存じ上げていますが、まだまだ一部です。現代の社会が求めている、自ら考えて判断して行動できる人材と、野球の指導の現場が大きく乖離しているということです。そこに強い危機感を感じています」
星川太輔氏はトラックマンを通して「野球の未来」を展望している。トラックマンなど先進機器の導入は、同時に野球指導者、選手の意識改革をも促すのだ。今後の動きに注目したい。
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