つまり「トラックマンを導入している」だけでは、アドバンテージはない。契約している他球団と同じデータを取得して、どんな分析をするか、どんな分野に役立てるか、が問われているのだ。最近、各球団でデータアナリストの雇用が話題になっているが、これはトラックマンなどの「武器」を十分に活用できるエキスパートを各球団が育成しようとしているわけだ。
一方で、トラックマンを導入していない2球団は、トラックマンを導入している球団の本拠地での試合では、相手球団には試合のデータを全て把握されるが、自分たちは自球団の選手のデータでさえも見ることができない、ブラインドがかかったような状態になる。
導入していない2球団も他のトラッキングシステムを導入しているが、情報量と言う点では決定的な差があるということになる。
このあたり、球団によって活用の目的が異なるようだ。
「ホークアイでバイオメカニクスのデータを取りたいというところもあれば、NPB全選手のトラッキングデータを取ることで編成上の選手評価を適切にしたいという球団もある。
投手コーチの中でも、トラックマンのデータを活用しているか、していないか、昔ながらの考え方でやっているか、今の状況をオンタイムで勉強しているかで、大きな差がついてきていますね。これからはトラッキングデータに関心・理解のあるコーチが求められて行くと思います。だから選手は、現役時代の実績がなくとも、この分野を一から勉強すればコーチとして大活躍できる可能性は十分にあると思います。
最近、ある球団のファームの本拠地球場にトラックマンを設置したのですが、他リーグの球団の関係者から“これはでかい!”と言われました。二軍の他リーグの選手のデータについて球団がどれだけ重要視しているかがわかります」
データアナリストの育成にも一役
機器の進化は今も続いている。トラックマンの牙城を脅かす新たな機器も開発されるだろう。トラックマン野球部門の責任者である星川氏は、プロ野球での市場を維持発展させるとともに、守勢に回ることなく新たな販路も開拓している。
「東京六大学野球連盟と契約しています。神宮球場での試合データを計測して提供するわけです。この場合も6つの大学にすべてのデータを提供します。東大の学生が早稲田や慶應の選手のデータを見て分析することもできるんです。特に大学の場合、優秀な野球部員がたくさんいますし、フィールドでプレイをしない“アナリスト”という部員がいる大学もいくつかあります。各大学は他学部の専門家とも連携をして活用してもらいたいです。そしてデータアナリストとしてプロやアマの野球の世界で活躍する人材が育ってほしいと思います。
また社会人野球でも大会ごとに契約をして、出場全チーム・選手にデータ提供をしています。高校野球連盟とは何年も交渉をしていますが、なかなか難しい状況です」
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