「物知りな人がエラい」日本の教育の決定的ズレ感 YouTubeで得られる情報を詰め込んでどうする

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石戸:知識偏重型の教育を、今の大人のほとんどが受けてきたし、知識の量によって評価されて育ってきたから、「大量の知識を備えた人=すぐれた人」と認識してしまうのでしょうね。

石戸奈々子(いしど・ななこ)/CANVAS理事長
東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、NPO法人CANVAS、株式会社デジタルえほん、一般社団法人超教育協会等を設立、代表に就任。慶應義塾大学教授・博士(政策・メディア)。総務省情報通信審議会委員など省庁の委員やNHK中央放送番組審議会委員を歴任。デジタルサイネージコンソーシアム理事等を兼任

これからAI(人工知能)が生産的な労働の多くを担うようになって、人間が働く時間がきわめて短くなる時代が到来したときには、「自分はどう生きたいのか」を考えられる場として教育現場が存在しているのが、目指すべき姿だと私も思います。

しかしながら同時に、教育と足並みをそろえて社会も同じ方向へ変わろうとしているのか? という視点ももつべきです。結局、私たちが多様な生き方・働き方を許容する社会をつくっていかなければ、大学も変わらない。大学が変わらないと大学受験も変わらないし、すると小中高の教育も変わりようがないわけです。教育改革を考えるときには、〝どこから変えていくか〞という議論もセットで必要ですよね。

たとえば、プログラミング教育の必修化が進むのはいいことですが、産業界はプログラマーの労働条件を改善する努力をしているのかどうか。このちぐはぐさを解消していくことが、教育を変えるスピードの向上にもつながるはずです。両輪のバランスが重要です。

知識は蓄えない時代へ

──アメリカのほうが日本よりも変化への対応は早く、公立学校ではユーチューブを授業に活用しています。

石戸:日本でも一部の感度の高い学校で始まっていますが、全体の浸透度としてはまだまだですね。2010年にMicrosoft (マイクロソフト)創業者のビル・ゲイツさんが「これからの5年で、世界最高の講義を、ネットで無料で受けられるようになる。それはどこか1つの大学で学ぶよりもずっとよい」と発言したことが話題になりましたが、その変化は現実になりつつありますよね。

大学の存在意義が世界的に問われていると思います。知識を得る目的だけならば、ネットで十分に満たされますから。

佐渡島:これからは知識もお金も〝蓄えない生き方〞が主流になるんじゃないかと思っています。シェアリングエコノミーでモノの所有が減って、知識もネットで外部化されていく中で、蓄えることの価値はどんどん下がっていくんじゃないかと。

これから学校で提供してほしいと思うのは、知識を蓄えるための時間ではなく、「今この瞬間にどれだけ集中して楽しめるか」を鍛えられる時間です。

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