「物知りな人がエラい」日本の教育の決定的ズレ感 YouTubeで得られる情報を詰め込んでどうする

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──グローバル化の時代には、子どもの海外体験も重要です。たとえば、全国の小・中学生の中から希望者全員に海外体験をプレゼントする。1カ月行くだけでも大きく違うと思います。佐渡島さんは10代を南アフリカ共和国で過ごした経験があるそうですね。

佐渡島:海外を見る経験は、日本あるいは自分自身を俯瞰して捉える力、つまりメタ認知を育むことになるんじゃないかなと感じます。自分を客観的に捉えることができると、「そんな自分をこれからどうやって成長させていこうか」と戦略が練られるようになる。いい経験になることは間違いないと思います。

それを実現しようとするときには必ず予算の問題が出ますが、モノよりもさらに測定が難しいのが「人の経済効果」。AができたらBができる、と一対一では語れなくて、複雑かつ中長期に投資の効果が出てくるものです。その認識のすり合わせが出発点になるのでしょうね。少子化社会ではどうしても教育投資に対する政治の動きは鈍くなるという歯がゆさはあります。

コロナ禍で見えた改善のアクション

石戸:OECD加盟国の中でも、日本は教育投資額が最低レベルです。民間企業もうまく巻き込んで社会全体で活性化できるといいですよね。

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佐渡島:つい「国が」「行政が」と大きな主語で語ってしまいがちだけれど、本当は「自分ならどうするだろうか」と自分を主語にして語ることをもっとしないといけないですね。

僕たちは長い目で教育の未来をデザインしないといけない。けれど、わが子の3年後に関してはつい近視眼で見てしまう。その悩みを抱えながらも、「じゃあ、自分はどうしようか」と考え、その話を皆ですることに意味があるのだろうなと感じました。

石戸:私もそう思います。そしてその流れはすでに起きているな、とも。コロナ禍で起きた全国一斉休校を機に、「学校とは何か」「教育とはどうあるべきか」と自分の言葉で語り、状況の改善に向けてアクションをする人が増えたことはとてもよかったと思います。

「子どもたちの学びを止めてはいけない」とさまざまなセクターの方々が動き出し、自分が提供できるコンテンツをシェアしたり、使われていなかった場所を提供したり、給食の代わりにお弁当を配ってみたりと、個性豊かで多様な動きがあちこちで生まれましたよね。

「教育は学校・先生任せ」の流れを逆回転させるムーブメントでもあり、こういった動きの先に、未来の教育はつくられていくのだろうと希望をもてました。

(司会:松田憲幸ソースネクスト代表取締役会長 兼CEO /新経済連盟 理事、執筆:宮本恵理子)

佐渡島 庸平 コルク代表取締役社長CEO/ 編集者

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さどしま ようへい / Youhei Sadoshima

1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社し、『週刊モーニング』編集部に所属。三田紀房『ドラゴン桜』を担当。小山宙哉『宇宙兄弟』のTVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎、平野啓一郎など小説も担当。2012年、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・株式会社コルクを創業。インターネット時代のエンターテインメントのあり方を模索し続けている。

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石戸 奈々子 CANVAS理事長

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いしど ななこ / Nanako Ishido

東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、NPO法人CANVAS、株式会社デジタルえほん、一般社団法人超教育協会等を設立、代表に就任。慶應義塾大学教授・博士(政策・メディア)。総務省情報通信審議会委員など省庁の委員やNHK中央放送番組審議会委員を歴任。デジタルサイネージコンソーシアム理事等を兼任。

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