独裁企業「フェイスブック」、ナンバー2退任の岐路 「フェイスブックの失墜」書いたNYT記者が語る

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――会社に残り続けている人も少なくないようですね。

とくにエンジニアは、個人に非常に大きな裁量があるのが大きい。最近では「ウェブ3」に惜しみなく投資し、メタバースを推進するためのデバイスやソフトウェアの開発を進めている。これらに興味があり、待遇のよい大企業を探している人なら、フェイスブックはリストの上位に来るだろう。

最近入社したある人は、家族全員に「フェイスブックで働いていることを批判されるぞ」などと警告されたと話していた。ただその人は、きっと5年後には今よりも社会にとってよい会社になると信じていると言っていた。今会社にいる人はそういう考えなのだと思う。

――フェイスブックは巨額の広告収入を稼ぎ続けていますが、アップルによるデータ追跡制限やユーザー数の減少など、逆風にさらされています。このまま生き残れるでしょうか。

2021年10~12月期の決算は衝撃的だった。成長にはっきり影が見えたのは初めてで、株価もこれまで以上に落ち込んだ。アップルの規制がどれくらい響くのか、成長鈍化はまだ続くのか、しばらく見届ける必要がある。

メインのフェイスブックアプリのユーザーは減り、インスタグラムへの若い世代の興味も薄れている。さまざまなスキャンダルに見舞われても、これまでユーザーの離反は起こらなかった。それを考えると同社は今、存在意義の危機に瀕しているといえそうだ。

失った評価を取り戻すことは難しい。だから大きな方向転換を強いられた。メタという社名への変更と、メタバース戦略の推進だ。

「ソーシャルグラフ」の優位性は大

――競合となりそうなプレーヤーも着々と力をつけています。

もちろん「TikTok(ティックトック)」は競合になる可能性はあるだろう。とはいえ、メタが今なお莫大なお金を稼ぎ続けていることは変わらない。これだけの規模の競合はいない。

フェイスブックをまだ侮ってはいけない。30億人のユーザー基盤をもってして、彼らがメタバースなるものを築けたとしたら、それは強大な力を持つだろう。すでにソーシャルグラフ(人と人とのつながり)があるのだから。これをゼロから立ち上げるのは非常に難しく、優位性は大きい。

2010年前後には、デスクトップからモバイルアプリへの移行が遅れた。当初のアプリはひどいものだった。だが巨大な”クルーズ船“を急旋回させ、2012年の株式上場前にモバイルへの移行に成功した。彼らは世界で最も優秀なエンジニアたちを抱えている。野心にあふれたCEOもいる。

ウェブ3ではソニーやマイクロソフトのような他社や新参の企業も多いが、それでも侮れない存在だ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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