独裁企業「フェイスブック」、ナンバー2退任の岐路 「フェイスブックの失墜」書いたNYT記者が語る
――「フェイスブック」という巨大企業をどんな言葉で表現しますか。
人々をつなぎ、やりとりを促す技術を使ってデータを収集し、それを広告主に売る。これに成功した極めて強大な力を持つ企業だ。人間同士の(ネット上の)交流は非常に価値のあるデータであり、経済における”金塊”ともいえるものだ。
――なぜこれだけ多くの問題が噴出したのでしょう。
フェイスブックは人知れず大きくなり、制御の利かなくなった「フランケンシュタイン」のような怪物ではない。(問題が噴出することは)社内の誰もが予測できたことだった。それでも防げなかったのは、あらゆる場面において、ユーザーを守るために「安全第一」ではなかったからだ。
マーク・ザッカーバーグは世界に巨大な影響をもたらしたい、すべてのネットユーザーを囲い込むものを作りたいと考え続けてきた。彼は野心に満ちあふれ、競争心も強い。だからいつも会社の成長を最優先に考えてきた。成長、成長、成長。そうしないと競争に巻き込まれて、はじき出されてしまうと。
彼にとっての成長とは、つねにユーザー数とエンゲージメント(利用頻度や時間)だった。ただその成長を続けるには売上高と利益という別の成長も必要だった。これがシェリル・サンドバーグの役目であり、彼女は広告のビジネスモデルを作り上げた。
世界をつなぐことは人類にとって重要。そんなまぶしいPR文句が用いられていたが、根底にあるのは競争心や野心、財務的な成功だった。
無名の中間管理職で終わりたくない
――サンドバーグ氏は世界銀行やアメリカ財務省など、公共機関での勤務経験がありましたが、民間の世界でも大きな成功を狙っていたと。
彼女はお金に執着していたわけではないと思う。高級車を乗り回したいなどといった物質的な欲求はなかったのではないか。もちろん大金持ちではある。ただ強大な力を持ったものを作りたい、(ビジネスで)勝って世界にインパクトを残したいと思っていた。
彼女の友人が私たちに話してくれたのは、彼女は無名で注目されないような、中間管理職で人生を終わりたくない人だということ。
そのうえで彼女はとても几帳面で、ビジネスを時間どおりに回すCOOという職にぴったりだった。ザッカーバーグはビジネスモデルや戦略、政策や規制といったことに無関心である一方、サンドバーグは技術者ではない。この2人は完璧な組み合わせだと思われていた。
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