日本にいる「難民申請者」交流して見えた悲痛現実 6月20日は世界難民の日、知られざる日本の実情

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国にいては命が危ないとして日本に逃れてきた彼は、入国直後に空港で拘束された。強制送還の対象になり「本国には戻れない」と言って拒むと、入管施設に収容された。

現在は、仮に収容所の外に出してもらう「仮放免」中だ。暫定的に収容を解かれている立場であり、仮放免中は定期的な出頭義務がある。

仮放免中は就労を許可されないため、衣食住のすべてを支援に頼らざるをえない。衣類は国から持ってきたスーツケースに入れていた数枚と、ボランティアからわけてもらったものしかなく、食事はフードバンクからの食材で自炊。住まいは、支援団体のシェルターだ。

筆者らが乗り込んだバスは、品川入管まで6つのバス停を通り過ぎた。その間、セバスチャンはほとんど言葉を発しなかった。彼とは何度も取材で会ったが、いつもと様子が違う。まっすぐに進行方向を見つめ、話しかけるのもはばかられた。バスに乗り合わせた他の外国人も、セバスチャンと同じような表情だ。

重苦しい空気の理由は「品川入管」にある。出頭すれば、そこで仮放免が打ち切られ、直ちに収容されるかもしれないからだ。仮放免の更新が認めらないと、身柄を拘束され、収容所に送られる。

バスの「帰り」はないかもしれない

2021年2月、名古屋入管でスリランカ人女性が衰弱死したことなどをきっかけに、入管収容所の問題は広く知られるようになってきた。劣悪な処遇だけが問題ではない。拘束の期間が示されない「無期限の拘禁」などが国際社会からも厳しい批判を受けている。予告なく空港に送られ、祖国に強制送還された人たちもいる。

品川入管に向かうバスの乗客には、そうした仮放免者が少なくない。数時間後に分かれる明暗。凶と出ればこの日、再びバスに乗ることはない。

もっとも、セバスチャンの緊張は思いがけぬ形で緩むことになった。

セバスチャン(仮名)。左は支援者の男性(撮影:益田美樹)
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