「元祖再生人」二宮金次郎に学ぶ地方創生 薪を背負っていたのには、理由があった!

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このように、単に「経費を削れ」と言うだけではなく、具体的方法を示すわけです。燃費がよくなって経費が浮いた分については、これを元手に、飯炊き担当の人が積極的に「スス落とし」に取り組めるよう、動機を与えています。

驚くべき「知恵」です。

「新たに稼ぐこと」、「経費を削ること」、この両方で皆の意欲を引き出し、小さな日々の積み重ねを通じて、細かいさまざまな財政、事業での黒字化を果たします。

人口減少問題を抱え、生産能力も右肩下がりの状況では、今までどおりにおカネを使っていては、いくらあっても足りません。まずは身の丈にあった状況を作り出す必要があります。しかも、それを可能にするための方法は具体的であり、皆が能動的に取り組みたくなるものでなくてはならないのです。

さまざまな「知恵」をひねり出す状況に、自分たちを置くために、収支を厳守する目標「分度」を作るのです。

最近、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」に代表されるように、富める者がさらに富む経済論に関する議論が盛り上がっていますが、実は、二宮金次郎は江戸時代においても、この問題と対峙しています。

例えば、地域の外に住んでいる高利貸しから借り、返済の見込みがつかない状況を解消するため、地域の人々に対して低利融資への借り換えを行っています。それだけではありません。ここからが彼の真骨頂です。

さらに、その「借り換えた借金」の返済計画を共に立て、しっかりと目標をもたせることで、生産意欲を取り戻します。そして借金が完済したら、その稼げる力をもとに、さらに1年分を追加拠出してもらい、基金を組成します。他に困っている人、もしくは将来自分が困った時の低利融資の原資として活用しています。

先述のような、奉公人による裏山の薪販売など、皆が「分度」の順守を通じて稼ぎだした余剰についても、「皆で使ったらそれで終わりだぞ」と諭しています。

利益を分配するのではなく、基金として拠出し、次なる取り組みに投資・融資していけば、数年、数十年が経てば膨大な資金になっていくことを複利計算と共に人々に教え、実行しています。つまり、事業収入での黒字化だけでなく、それを元手にした金融収入を地域の人々に与える仕掛けづくりを行ったのです。

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