コロナ禍でも都心部へ流入、「脱東京」のまやかし 東京の要介護認定者は鳥取の人口を超える

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さて、問題は今後である。1400万人近い人が暮らす東京は、それだけ巨大なリスクを抱えている。まず懸念されるのは大災害による巨大被害だ。

5月25日、東京都防災会議地震部会が首都圏直下地震などの被害想定を公表した。都心南部をマグニチュード7.3の地震が発生した際の被害は、死者6148人、負傷者9万3435人、建物被害19万4431棟、避難者299万3713人などと想定されている。

建物の耐震化や不燃化が進み、2012年想定の東京湾北部地震の被害想定よりも死者、負傷者は少なくなっているが、それでもとてつもない被害に変わりない。

大震災の帰宅困難者は453万人

運良くケガをせずに済んだとしても、地震直後には厳しい生活が待っている。都内では帰宅困難者が453万人発生。東京駅には43万人、新宿駅には40万人もの人々が滞留する。街灯や信号は停電で消え、携帯電話もつながらない。停電、断水でタワマンのマンションのインフラが止まり、トイレも使えなくなる。倒壊を免れたコンビニやスーパーに人々が殺到し、あっという間に棚が空っぽになる。社会インフラが機能しない中で、負傷者の救出はスムーズにいくだろうか。

東京23区で震度5強を記録した東日本大震災のときでさえ、東京は一時パニック状況に陥った。それをはるかに上回る規模の大地震が直撃したとき、はたして被害は想定の範囲内で収まるだろうか。経済被害は約22兆円と推計されているが、本社機能、情報通信機能が集積しているだけに数字では測れない被害を覚悟しておかなければならないだろう。

一極集中が抱える問題は災害だけではない。東京でも確実に進んでいる少子・高齢化がもたらす影響も大きい。コロナ前の2019年、東京都の出生数は10万1817人だった。それが2021年は9万5402人にまで減少。2年続けて10万人を割り込んだ。21年の合計特殊出生率は1.08で全国平均の1.30を大きく下回り、全国最下位である。

人口が増えているのに、東京で生まれる赤ちゃんはどんどん減っている。それだけではない。22年3月と4月の人口移動報告を見ると、東京は転入超過にもかかわらず、0~14歳の子どもは3月が2055人、4月が1580人の転出超過となっている。生まれる子が減ってきているうえに、その上の世代の子どもたちまでもが出て行ってしまっているのである。

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