ダボスで見た「ウクライナめぐる情報戦」の熾烈 メディアを駆使してロシア包囲網強め中国も牽制

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実際に訪ねてみると、生々しい戦争被害を訴える写真が並び、戦火でメチャクチャになった建物を映す動画も放映されていた。「ロシア戦争犯罪ハウス」という命名も含めて強烈で、このバズらせ方はさすがだと思った。現場にいた担当者に聞いてみると、案の定「ウクライナ大統領府が企画に関与している」とのこと。

今回の展示がすべて見られるサイトまでネット上に開設する徹底ぶりだ。ゼレンスキー氏がエンタメ業界にいたこともあってか、ロシアとは対照的にメディア戦略が洗練されていると改めて感じた。

ちなみに、その近くにある「ウクライナハウス」には、こちらもゼレンスキー氏が演説中に触れたユナイテッド24(United24)というウクライナ直接支援のためのプラットフォーム専用の端末が備え付けてあった。そこから暗号資産を含めた様々な方法で寄付が可能になっていた。

ダボス会議では、ウクライナ戦争が話題の中心となり、ウクライナの国会議員も与野党の垣根を越えてワンボイスでまとまって声をあげていた。また、今回の戦争が引き起こし、日本ではまだあまり切迫感を持って語られていない「フードクライシス(食糧危機)」と言う言葉を頻繁に耳にした。アフリカにはウクライナからの食料輸入に大きく依存している国が少なくないためだ。

ダボスでアメリカと中国がつばぜり合い

今回のダボス会議期間中にアメリカと中国の間でちょっとした「事件」が起きた。アメリカのマイケル・マッコール下院議員が、CNNの生中継インタビューで、上記のゼレンスキー大統領のスピーチの際、他の聴衆が拍手を送る中、解振華特使率いる中国代表団が会場から出ていったと「現場写真」とともに批判したのだ。

しかし中国メディアの「財新」はその写真に映るアジア系の男たちが実はベトナムのレー・ミン・カイ副首相率いる同国代表団のメンバーであると報じた。中国の解特使らは演説の時刻には、別の人物と会談中だったとのことだ。

今年の秋に中国では共産党大会が開催される予定で、米国では中間選挙が控えている。そうした両国の国内事情もあり、米中対立は当面より深刻になることはあれど、融和に向かうことはないと予想される。今回の騒動は、米中がウクライナ情勢を巡ってもいがみ合っていることを印象づけた。

ある中国側の参加者は「アメリカはウクライナを利用して自分の手を汚すことなく欧州をまとめ上げ、ロシアを追い詰めている」と陰謀論めいた見方を披露していた。

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