ダボスで見た「ウクライナめぐる情報戦」の熾烈 メディアを駆使してロシア包囲網強め中国も牽制

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今回のダボス会議は異例ずくめだった。新型コロナの世界的な流行を受け、リアル開催は2年半ぶり。会場で入場バッジを取得する際にはPCR検査が求められた。

総参加者数は前回の約3000人から約2500人まで減少。例年なら1月に積雪のなかで開催されるが、今回は延期に次ぐ延期で結局5月開催に。会場周辺には青々とした草原が広がり、小鳥のさえずりが聞こえた。

永世中立国スイスも方向転換

何しろ、地図上で「すぐそこ」のウクライナで戦争が繰り広げられている中での開催だ。ウクライナとロシアを迂回するため日本からスイス方面への飛行時間は通常より1時間以上長くなっていた。戦争が実際に現在進行形で起きていることを意識させられた。

スイスの首都、チューリッヒでは街のあちこちにウクライナの二色旗が掲げられていた。今回の戦争は、欧州の中央に位置するスイスに長きにわたって維持してきた中立を見直させるほどの衝撃なのだ。

スイス政府は、ロシアによるウクライナへの侵攻当初こそEUの制裁に加わらない姿勢を示していた。だが2月28日には早くも方針を変更し、EUと歩調を合わせる形で制裁の発動を発表した。4月上旬の時点で、スイスはプーチン大統領やミハイル・ミシュスチン首相の保有資産を含む約80億ドル相当のロシア資産を凍結している。

例年ダボス会議開催中にロシア代表らが使う建物をウクライナ側が借り切って、「ロシア戦争犯罪ハウス」に改装(写真:筆者撮影)

最近では、軍事的中立を守ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンがNATO(北大西洋条約機構)加盟を申請した。すぐに加盟するわけではないが、スイスでもNATOとの関係強化を望む声が高まっている。

ダボスに設けられた「ロシア戦争犯罪ハウス」は、ゼレンスキー大統領が演説でも言及して世界的に注目された。例年ダボス会議開催中にロシアの代表らが会談を行う「ロシアハウス」を今回はウクライナ側が借り切って、ロシアによる戦争犯罪の証拠を展示する場にしたものだ。

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