30年で子どものIQが「3歳分」も低下した背景事情 スクリーンから離れると脳はどんどん成長する

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このような変化は、制御不能な影響を取り除くことで始まり、良質な睡眠によって強化される。同時に、美しい相乗効果として、スクリーンの代わりに行われる活動によってこの効果が倍増する。スクリーンタイムがなくなると、多くの場合、子どもの健康的な発達に必要とされる活動や関わり合いが、その時間を埋めていく。家族の絆が深まり、子どもが自然の中で遊ぶようになる。

回復プログラムやその後のマインドフル・スクリーンマネジメントの使命は、子どもの現在の心の健康と未来の成長を最適化することだ。そのためのステップについては、後の部分で説明するが、ここではデジタルデトックスの全体像をつかんでいただき、なぜこのプログラムがこんなにも「お得」なのかを実感し、理解していただきたいと思う。

メンタルヘルスについては、症状の緩和を求めたがり、「何を目指すのか」を置き去りにしてしまいがちだ。

脳に何が起こっているのか、精神疾患がどのように症状や機能障害を引き起こすのか、ということはよく知られている。スクリーンタイムがどのように私たちに悪影響を与えるのかを理解してもらうために、何が問題になるのかを断片的に説明してきた。スクリーンタイムが、さまざまなメカニズムで、さまざまなレベルで、私たちに悪影響を及ぼすことがおわかりいただけたと思う。

病気とは物事がどのように「壊れていくか」である一方で、健康とは「統合すること」である。どのような状態であっても、目標は、脳を完全な状態に近づけることだ。脳が統合されればされるほど、回復力と能力が高まるのだ。

変化に対応できる「柔軟性のある脳」が理想

児童精神科医のダン・シーゲル博士は、マインドフルネスと健康的な愛着の神経生物学的研究の先駆者である。彼はメンタルヘルスを「川の流れ」にたとえている。一方の岸は「混沌」を表し、もう一方の岸は「硬直」を表していて、目指すのは、どちらかの極端な状態をも避けて、川を快適に流れていくことで、必要に応じてコントロールを強め、行き詰まったら手放すのだ。

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