30年で子どものIQが「3歳分」も低下した背景事情 スクリーンから離れると脳はどんどん成長する

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実際、2003年に上位10%に入った子どもの中には、1970年代の同じ層の子どもと同じような高得点を取っている子どもはいなかった。2003年の子どもは、平均して1970年代の子どもよりも3年遅れていた。以来ほかの研究でも、ほかのIQ指標で同様の低下が示唆されている。

テレビの視聴に、ゲームやパソコン使用が拍車?

なぜこのような逆転現象が起きたのか、そしてなぜスコアが下がり続けているのか? なぜ男子のほうが女子よりも影響を受けているのか? 

誰にもわからないし、確かなことは言えないが、専門家の間では、テレビ視聴の増加が最初の低下をあと押しし、ゲームやパソコンの使用が増えたことがそれに拍車をかけたとされており、活動レベルの低下、読書時間の減少、想像力を駆使した遊びの減少なども、この差の原因になっていると考えられている。

つまり、直接的にも間接的にも、スクリーンタイムとそれに付随するすべてのものが原因となっているのだ。

IQは「脳の健康そのもの」を測る指標ではないが、「発達の成熟度」を測る一種の基準にはなる。これまで見てきたように、スクリーンメディアは、短期的には子どもの脳を拘束し、生活のあらゆる分野の機能に影響を与える。そして長期的には、スクリーンメディアが発達そのものを阻害し、成長の妨げや停滞、さらには退行を引き起こすことが観察や研究からわかっている。

逆に、スクリーンなしの生活をすることで、時間の経過とともに利益が増加する。

双方向スクリーンをほとんど使わずに育った子どもは、感情面での認知発達や機能レベルの点で、スクリーンに接していた「典型的な」聡明な子どもを上回ることが考えられるのだ。

これは、「スクリーンから自由になれば、精神的な健康だけでなく、時間をかけて実現される発達上のメリットも得られる」ということだ。スクリーンタイムがなくなると、脳内化学物質のバランスが調整され、概日リズムが再び正常に戻る。過剰な刺激を受けたネットワークが鎮まり、ストレスホルモンが減少し、血流が前頭葉に戻ってくる。

次ページスクリーンタイムがなくなると
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事