30年で子どものIQが「3歳分」も低下した背景事情 スクリーンから離れると脳はどんどん成長する

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1975年から2000年にかけて子どもの数学と科学の知能を測った指標では、1990年代半ばでピークに達し、そこからは大幅に低下していた(写真:Fast&Slow/PIXTA)
2000年から3年ごとに実施されているOECDのPISA(Programme for International Assessment)と呼ばれる学習到達度調査があります。日本は、調査開始時の2000年にはOECD加盟国中「数学的リテラシー:1位、科学的リテラシー:2位、読解力8位」と高水準でしたが、2018年の前回調査では「数学的リテラシー:5位、科学的リテラシー:6位、読解力15位」と大幅に順位を下げています。
近年見られる学力低下の要因のひとつとして、アメリカ・精神科医のダンクリー博士は、デジタル機器による子どもの脳への深刻なダメージを挙げています。こういったデジタル脳のおそろしさと脳の回復方法をまとめた『子どものデジタル脳 完全回復プログラム』から一部抜粋・再構成してお届けします。

子どもの知能が1990年代半ばから大幅低下

1980年代に、知能研究者のジェームズ・フリンが興味深い現象について書いている。前世紀の間、IQスコアが10年ごとに約3ポイント上昇していたため、研究者は15年ごとに曲線を再正規化する必要があるというもので、「フリン効果」と呼ばれている。

この効果は、先進国を中心に世界的に見られ、専門家は、栄養状態の改善、刺激的な環境、教育の進歩、特に特別支援教育などの社会環境要因が影響しているのではないかと考えた。

しかし1980年代から1990年代にかけて、先進国ではIQの上昇が緩やかになり、その後停滞する一方で、発展途上国ではIQの上昇が続いていることから、環境の恩恵を最大限に受ければIQは実質的な「天井」に達すると考えられた。

ところが、それと同じくらい興味深いことに研究者たちは気づき始めた。2007年、ロンドン大学キングスカレッジのマイケル・シェイアー教授などが、「実は傾向が逆転している」という驚くべき研究結果を発表したのだ。

1975年から2000年にかけて数学と科学の知能を測った指標では、知能は1990年代半ばでピークに達したにもかかわらず、そこからは大幅に低下していた。さらに、2000年から2003年にかけて、中学1年生の生徒の知能は低下し続けていたのだ。

この研究では、ほかにも次の3つの興味深い発見があった。

①男子と女子の間の数学と科学の得点差がなくなった。
②男子も女子も得点が下がっているが、男子のほうが女子の約2倍も下がっている。
③高得点者も低得点者も、一様に得点が下がっている。
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