就職ではなく「就社」してしまった中高年の行く末 誰もが自らキャリアを築ける環境作りの重要性
中高年層の異業種、異職種への転換を促すためには、キャリアコンサルタントへの情報提供の拡充、マッチングデータの集約およびマッチングの精度を高めるためのデータを用いた調査研究、シンガポールのスキルズ・フューチャーの例のような、個人のセカンドキャリアにつながる教育プログラムを受講しやすい環境づくりが必要だと考える。
同質的価値観に基づく旧来型の働き方が主流だった時代には、勤め先の企業の考え方に従業員が合わせるということが当然とされ、そのギャップが問題となることが少なかった。しかし、中高年男性を取り巻く環境の変化を踏まえれば、中高年男性と勤務先間の意識のギャップを縮めることが求められる。
今後、中高年男性はもちろんのこと、希望する従業員にキャリアコンサルティングの機会が提供され、1人ひとりのキャリアをきめ細かに支援していくことは、従業員の意欲の維持・向上につながるだけではなく、企業の生産性向上のためにも必要だろう。
「外部」コンサルだからできること
キャリアコンサルティングでは、キャリアコンサルタントの力を借りながら、自分の強みや経験などの棚卸をする機会が得られる。希望すれば、適性試験などを活用して、自分の適性を知ることも可能だ。
職場の上席者にキャリアの相談ができる環境であっても、上席者である以上は、組織側の目線で助言をしてしまうなど、中立的な支援が難しいことが懸念される。しかし、外部のキャリアコンサルティングを利用した場合は、第三者であるがゆえに、個人として私生活含め、自分のキャリアを総合的に見直す機会にもつながる。
今後、キャリアコンサルティングを活用する企業が増えてくれば、キャリアコンサルタントの質の向上や、現場をとりまとめるコーディネーターといった人材づくりも、国としての支援が必要になるだろう。
1人ひとりが、組織に頼らず主体的にキャリアを切り拓いていく姿勢をもつことはもちろんのこと、企業側が高齢になった従業員のエンプロイアビリティを高めるための支援を行うことも、労働人口が減少する日本社会にとって重要なことだと考える。
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