書かれていない筆者の真意を汲み取る国語訓練法 体験を結び付けて、文章を頭の中で映像化する
では、小学生になったお子さんには辞書を手渡し、辞書引きの習慣を身につけさせれば問題が解決するかのかというと、そうではありません。お子さんが物語を正しく理解できないのには、語彙力以外にもう一つ、根深い要因があるのです。
それが、冒頭でお話しした「見えないものを観る目」が育っていないということ。どれだけ言葉を教え、文法を身につけさせても、見えないもの(書かれていないこと)を理解する力がなければ、物語を正しく深く読むことはできません。
試しに、「わらしべ」「長者」「観音」という言葉を辞書(『三省堂国語辞典』 第7版)で調べてみましょう。
「わらしべ」:稲穂のじく。また、わらのくず。
「長者」:金持ちの人。富豪。徳のあるおだやかな人。
「観音」:(仏)観世音。(俗)しらみ。
と書かれています。
言葉を頭の中でリアルにイメージする
子どもたちが、この説明を読んでどこまで実物をイメージできるかは、はなはだ疑問ですが、自然体験が豊富で、稲穂やわらを見たことのある子は、この説明だけでも「わらしべ」が想像できるでしょう。また、よく時代劇を見るという子も、昔のお金持ちの暮らしや振る舞いがイメージできそうです。
国語を得意にしたければ、読んだ文章を頭の中で映像化できるようにしなくてはいけませんから、五感体験が豊富で、言葉をリアルにイメージできる子のほうが、だんぜん有利です。
さて、ここで難しいのは、目には見えない観音様をどう理解させるか? ということですね。お子さんに辞書を引いてもらうと、「観世音」の意味がわからないので、とりあえず、観音様を「しらみ」だと思って「わらしべ長者」を読み進める子も少なくありません。
そうなると、この物語は、しらみの声を聞いた男が物々交換して大成功する話となってしまい、おもしろくはありますが、なんとも深みのない話で終わってしまいます。
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