ゼレンスキー「俳優時代の主演ドラマ」見るべき訳 ウクライナ大統領になったきっかけ「国民の僕」

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コメディ俳優だったゼレンスキーが高校教師からある日突然、大統領になってしまう主人公を演じた(写真:Kvartal 95/Eccho Rights)

ドラマの中では高校教師役から始まります。バツイチ出戻りで先立つものもなく、一見すると頼りなさそうにも見えますが、実直さを取柄に生徒から愛される歴史教師、ヴァシリ・ゴロボロジコという役名の主人公です。掴みのこのキャラクター設定からも、メディアで見せるゼレンスキー本人の親密さや誠実さを彷彿とさせるものがあります。加えて、ゼレンスキーはもともとコメディー俳優です。政治の世界を知らない高校教師がある日突然、大統領になってしまうこのドラマの展開とも少なからず似ています。

冒頭、大統領に転身したワケも興味深いものがあります。普段は温厚で謙虚なゼレンスキー演じるゴロボロジコが、自国の状況のふがいなさを爆発させたシーンが引き金となります。その内容は、腐りきった政治の現実や、国民の無関心、プーチン政権を支持する新興財閥オリガルヒに対する不満でした。実際、このドラマがウクライナで初放送された2015年当時の状況とも被ります。ポロシェンコ大統領の統治下で汚職や癒着問題が問われていました。

自転車で通勤する新たなリーダー

そして、ドラマでは何ら意図せず発言したその様子を生徒がこっそり撮影。動画投稿したら思いもよらずバズります。さらに生徒がクラウドファンディングで出馬のための費用を集め、あれよあれよと当選。そこからタイトルどおり、古いアパートに住んだまま、自転車で通勤する「国民に仕える僕」のような新たなリーダー像の物語が始まっていくのです。

インパクトのあるメッセージを発信し続けるゼレンスキー大統領自身もリーダー像に独自のこだわりがあるように見えます。だから余計にドラマの中で大統領役としての話が進んでいくと、実際のイメージと重なることがあります。なかでも、第3話で描かれる就任演説シーンは見ものです。そこで発せられたせりふがこれ。

「人間として恥じない行動を子どもたちに、親たちに、あなた方に、ウクライナの皆さんに約束する」

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