日本人の「数学オンチ」大人になって感じる深刻さ 佐藤優氏×宮本さおり氏が語る「数学の本質」

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文系でも逃れられなくなる数学

宮本:最近の大学入試では、私立文系でも難関校は入試で数学の試験を課すところが出ています。推薦入試の要件にも、英、国、数の内申平均を求めるところがあったりと、文系だから数学はいらないということでもなくなってきました。もちろん、これまでも国公立は文系でも数学を課されていましたが、文系でもどの程度まで数学ができたほうが望ましいのでしょうか?

佐藤:数ⅡBまででは足りないと思います。数Ⅲまでやったほうがいいかと。これからの時代は文系の人にも解析分野の理解が重要になりますから、そこまで至るためには数Ⅲまで必要です。そうしないと、大学に入ってから苦労することになりかねません。

宮本:政治学の分野でもデータ分析を使った研究がされていますから、統計や解析の学びが必要というのはわかります。

『データサイエンスが求める「新しい数学力」 AI、データ分析が壊す文系理系の壁』(日本実業出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

佐藤:経済学部はもともと数学の知識が必要でした。必ずどこかで解析の問題がからんできますから、理解できていないと苦労すると思います。それに、社会学もデータマイニングをしますから、数学の知識がいります。それにね宮本さん、数学って実はすごく哲学的な学びでもあるんです。

宮本:ピタゴラスの定理で有名なピタゴラスも、王様に「お前は何者か」と聞かれたときに「哲学者です」と答えたという話もありますよね。物事を知ろうとするときに、数学という手法を使ったわけで、そもそも物事を深く考えるときに、文系、理系という壁はないのかもしれません。

佐藤:例えば、自然をどう考えるかもそうです。自然数にゼロを入れるか、1を入れるかという問題や、数学では無限の概念についても考えますよね。「無限とは何か」なんて、まさに哲学的なことに結びついていると思いませんか? こうしたすごく難しい問題が、すでに中学数学の段階でも潜んでいる。そして、高校数学の段階になるとかなり出てきます。

こういうことを面白く教えてくれる先生がいれば、数学が好きな子は増えると思います。そして、難しいことはそのときに解けなくてもいいんです。「これが問題圏なんだ」ということを高校生のうちに持っておいて、大学生になって深めていけばいいんです。数学が好きになるには、とにかく、面白いと思うことから始まると思います。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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