中国の国有発電大手の中国長江三峡集団(三峡集団)が、主力事業の大規模水力発電所(の建設・運営)以外の成長機会を模索している。その有力候補の1つが(リチウムイオン電池を用いた)蓄電事業の展開だ。
三峡集団の子会社の三峡水利電力は5月12日、リチウム大手の贛鋒鋰業(ガンフォンリチウム)、水力発電大手の中国長江電力、投資ファンドの長江緑色発展基金と共同で総額20億元(約380億円)を出資し、蓄電事業と電池リサイクルを手がける新会社を設立すると発表した。
出資者のうち贛鋒鋰業を除く3社は、いずれも三峡集団の傘下企業だ。出資額は贛鋒鋰業が6億元(約114億円)、残る3社が合計14億元(約266億円)。将来的には資本金を50億元(約949億7000万円)に引き上げることも検討している。
大規模水力発電所の新設難しく
現時点では、蓄電事業で利益を上げることはまだ難しい。蓄電システムの導入コストが非常に高いことに加え、市場メカニズムが有効に機能するビジネスモデルが確立していないためだ。三峡集団による今回の新会社設立は、将来を見据えた先行投資と言える。
「中国国内では、発電設備容量1000万キロワット級の水力発電所の建設候補地が枯渇に近づいている。今後の開発はますます難しくなり、コストも上昇するだろう」
三峡集団の雷鳴山董事長(会長に相当)は、2021年6月にメディアの取材に対してそう語り、今後の経営戦略について次のように述べた。
「わが社の総力を挙げて再生可能エネルギー事業を発展させ、主力事業(の1つ)に育てたい」
しかし、再生可能エネルギーは(天候などに左右されて)出力の変動が大きいという弱点がある。それを補完し、(需要に応じた)フレキシブルな電力供給を実現する切り札として期待されているのが、大規模な蓄電設備なのである。
言い換えれば、電力供給企業は再生可能エネルギーと蓄電設備を組み合わせることで初めて、需要家の様々な要望に対応した高効率のサービスを提供できる。三峡集団の長期的な狙いはそこにあると言えそうだ。
(財新記者:蘆羽桐、陳雪婉)
※原文の配信は5月14日
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