アメリカに広がる「減税ラッシュ」思わぬ落とし穴 「生活支援減税」がインフレを加速させる逆説

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政治日程も減税に拍車をかけている。多くの知事や州議会議員が11月に選挙を控える中、ガソリン、食品、家賃の高騰に対する有権者の懸念は鮮明になっている。

「納税者にのしかかるインフレ圧力を目にしながら、潤沢な予算の還元に手を出そうとしない政治家がいるとは考えにくい」。タックス・ファウンデーションのジャレド・ウォルザック氏は、「問題は、納税者にお金を配ると、インフレを緩和するどころか加速しかねないことだ」と話した。

各州で進む減税は、バイデン政権が物価高騰の対応に苦しんでいることの裏返しでもある。ホワイトハウスは今のところガソリン税の一時停止を求める声に抵抗しているが、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、ジョー・バイデン大統領はそうしたアイデアを否定しているわけではないと4月に語っている。

政府は主に物不足の原因となっているサプライチェーン(供給網)の目詰まりを解消したり、価格のつり上げを取り締まったりすることでインフレに対処しようとしている。とはいえ、インフレ抑制は基本的には連邦準備制度理事会(FRB)の仕事だ。

ホワイトハウスは大統領がインフレ問題に真剣に取り組んでいる証しとして、燃料供給を拡大する措置のほか、供給網を強化したり、医療・保育費負担を引き下げたりする案を引き合いに出した。ただ、州の減税については評価を避けている。

「バイデン大統領はアメリカの家計負担を引き下げ、インフレに対処するため、積極的に行動している」というのが、エミリー・サイモンズ報道官のコメントだ。

税とインフレの関係は複雑

税政策がインフレに与える影響を見通すのは簡単ではない。大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤングのパートナー、デビッド・ハーツィグ氏によると、増税は理論上、物価を押し下げる効果を持つが、増税が賃上げの要求に発展すると、さらなる物価高騰という意図せぬ結果につながることもある。

「波及効果をすべて知ることはできない」。かつて税法の教授だったハーツィグ氏はそう語った。

ただ、世論調査では今年、インフレが有権者にとって最大の懸念事項となっており、インフレ対応策が選挙の勝敗を左右する可能性がある。そのため候補者たちは、物価高に対応した生活支援策を一段と強く打ち出すようになっている。

(執筆:Alan Rappeport記者)
(C)2022 The New York Times

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