「やる気のある社員」から会社を辞める当然の事情 社員は3つの欲求が満たせないと離職を考える

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なかでもとりわけ多いのが、「上司との関係がうまくいかなかった」というものでした。

ある社長からこんな話をされたことがあります。

「うちの会社を辞める人間は、実家や親族の事業を手伝うことになったと言って辞めることが多いんです。実家や親族が事業をやっている人間って、世の中にそんなにいるもんですかねぇ」

私は社長が本当の離職理由が把握できていないと思い、現場への聞き込みをしてもらいました。

その結果、ある管理職の方が部下に対してきつい接し方をしていることがわかり、それが原因で何人も辞めているのではないかという情報が得られました。そして、その管理職の方に事実確認をしたうえで、部下との接し方を改めていただきました。それにより、その後、離職者はほぼ出なくなりました。

もしこういった対応ができていなければ、この管理職の方が原因でその後も離職者が出ていたでしょう。こういった事例はいくつもあります。

本当の離職理由を把握しないまま放置すると、また同じ理由で次の離職者が出ます。そのため、会社は離職者本人の離職理由を鵜呑みにせず、本当の離職理由を把握する意識を持つことが重要です。

人間が抱く根源的な「3つの欲求」

私の経営指導の経験から言えることは、「人は人間が根源的に抱く欲求が満たされない時、離職を考える」ということです。

ここで言う根源的に抱く欲求とは、アメリカの心理学者クレイトン・アルダファーが提唱した「ERG理論」で示される生存欲求、関係欲求、成長欲求の3つを意味します。

「生存欲求」とは安心・安全に生きていきたいという欲求であり、現代では給料や雇用環境が影響します。

「関係欲求」は良好な人間関係を築き、人から認められたいという欲求。

「成長欲求」は苦手を克服し、得意分野を伸ばし、自らの可能性や才能を発揮していきたいという欲求です。

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